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高速高精度マルチカラー全反射暗視野顕微鏡の開発に貢献

2019年12月09日 研究報告

 近年、光学顕微鏡は、特定のタンパク質や脂質などの生体分子にプローブと呼ばれる目印をつけることで、その生命反応をライブで観察できることが可能になりました。下村博士が2008年にノーベル化学賞を受賞することになったGFPもその一つです。そしてさらに、1つの生体分子の挙動を詳細に観察する方法として一分子計測技術があります。これにはより明るいプローブが必要で、金のナノ(100万分の1 mm)粒子などが用いられます。金ナノ粒子は、緑色の光に共鳴して光を強く散乱する性質があります。これまでこの金ナノ粒子を用いて、モータータンパク質や脂質の挙動が捉えられました。しかしながら、金ナノ粒子を用いた観察では複数種の生体分子を同時に識別して観察することは困難でした。
 今回、分子科学研究所の飯野教授が率いる研究グループは、生体分子に複数の異なるナノ粒子をつけて、これらを同時に高速でさらに高い位置精度で観察できるマルチカラー全反射暗視野顕微鏡を開発しました。そこでは、緑色の光(561 nm)に共鳴する金ナノ粒子に加えて、紫色の光(404 nm)に共鳴する銀ナノ粒子、青色の光(473 nm)に共鳴する金銀合金ナノ粒子の3つが用いられました。そして、これらの高い計測精度を定量的に評価するためには、各ナノ粒子の正確なサイズとその粒径分布を知っておく必要がありました。生理研では、電子顕微鏡を用いて各ナノ粒子の像を直接記録し、そのサイズと粒径分布を正確に測定することで(図1)、マルチカラー全反射暗視野顕微鏡の実用化に大きく貢献することができました。
 細胞の内では、様々な生体分子が複雑に相互作用しながら生命活動を営んでいます。これら複数の生体分子の活動を同時に観察することができれば、生命機能をより深く理解することができます。マルチカラー全反射暗視野顕微鏡はこれを可能にする顕微鏡で、今後、より複雑な生命現象の解明に用いられて行くことが期待されます。

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図1 各ナノ粒子の電子顕微鏡像と粒径分布 AgNPs:銀ナノ粒子、AgAuNPs:金銀合金ナノ粒子、AuNPS:金ナノ粒子

 

共同研究者

安藤 潤、中村 彰彦、山本 真由子、飯野 亮太(分子研)
宋 致宖、村田 和義(生理研)

科研費や補助金、助成金など

科研費(JSPS)、自然科学研究機構新分野創成センター イメージングサイエンス研究分野プロジェクト

リリース元

Title: Multicolor high-speed tracking of single biomolecules with silver, gold, and silver-gold alloy nanoparticles
Authors: Jun Ando, Akihiko Nakamura, Mayuko Yamamoto, Chihong Song, Kazuyoshi Murata, Ryota Iino
Journal: ACS Photonics
Issue: 6:11, 2870-2883
Date: Oct 17 2019
URL (abstract): https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsphotonics.9b00953
DOI: 10.1021/acsphotonics.9b00953
 

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