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皮質神経回路で発生するオシレーション活動と運動学習

2021年10月18日 研究報告
 脳の高次機能を担う大脳皮質は、様々な脳領域に情報を出力します。これまでに、私たちは皮質の出力細胞である錐体細胞の多様性に着目し、錐体細胞が投射先に依存して生理学的・形態学的に異なり、また皮質内では互いに選択的にシナプス結合を形成することによって投射先に対応したサブネットワークを構築していることを見出しました。今回、これらのサブネットワークが大脳皮質(運動野)の活動をどのように制御しているのかについて、脳スライス標本で光遺伝学的手法を用いた特定の神経細胞の活動操作によるネットワーク活動の解析や実験データに基づいた回路モデルを用いた計算機シミュレーションを行いました。その結果、脊髄路に投射する(PTタイプ)5層錐体細胞と抑制性介在細胞であるFast-Spiking細胞の相互結合によってβ/γ(30~35Hz)オシレーション活動が発生することがわかりました。さらに、オシレーションの機能的役割を検討するために回転カゴの足場バーの間隔を不規則にし、バー間隔のパタン学習をラットに行わせました。学習中の動物の一次運動野から細胞外記録を行い、局所電場電位を解析した結果、スライス実験と同様にβ/γオシレーションが発生していることがわかりました。5層PT細胞を選択的に光操作し活動を上げるとオシレーションが増強され、また運動学習の形成が早くなりました。また、PT細胞の活動を抑制するとオシレーションが減弱し、学習形成も阻害されました。これらの結果から、運動野の局所回路では特定の錐体細胞サブタイプと抑制性介在細胞のサブネットワークの相互結合回路においてオシレーション活動が発生し、運動学習の形成に重要な役割を担っていることがわかりました。
                         



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 図:皮質局所回路網におけるサブネットワークとオシレーションの発生

科研費や補助金、助成金などの情報

新学術領域研究:メゾスコピック神経回路から探る脳の情報処理基盤(25115730)
新学術領域研究:脳情報動態を規定する多領野連関と並列処理(17H06311)

論文情報

Title: Pyramidal cell subtype-dependent cortical oscillatory activity regulates motor learning

Authors: Takeshi Otsuka and Yasuo Kawaguchi
Journal: Communications biology
Issue: 22;4(1)
Date: 22 April 2021
URL (abstract):
DOI: 10.1038/s42003-021-02010-7

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