生理学とは

生理学は生体の機能とそのメカニズムを解明する学問です。「生体」とは、人体を含 めて全ての生物体を意味し、「機能」とは個体レベルにおける生体機能のみならず、 その個々の構成体(分子、細胞、組織、器官)の機能や、複数の個体が社会生活を営む 上での、生態学的、心理学的現象を含めた機能をも意味します。生理学が扱う対象は 生きた材料であり、生きている条件下でリアルタイムに観察することが特徴です。生 体機能は、多くの分子群や細胞群の働きと、その相互作用によって、更にはそれらが 作り上げる器官や個体レベルの働きによって逆に統御されながら、全体としてホメオ スタシスを保つ形で実現されています。従って、これを研究する生理学は、生体機能 を分子、細胞、器官、個体の各レベルでのメカニズムを解明するとともに、それらを システムとして統合的に取り扱う「統合生物学」Integrative Biologyとしても位置 づけられます。このような意味で、生理学は生体が働く仕組み(ハードウエア)とその 論理・法則(ソフトウエア)及び意義を明らかにする学問です。ノーベル賞の領域名が “医学・生理学”と呼ばれるように、生理学は本来、医学を含め全ての生命科学の基 礎を与える重要な学問なのです。