脳と心の科学の推進に力を

【2008年06月25日】

第5回所長記者会見より
岡 田  泰 伸

無差別殺傷、児童虐待・・・・信じがたい事件に、日本の社会を蝕むヒトの心の病や歪みの深刻さを思わせる毎日です。心は脳の働きにありますので、脳科学にもその解決への期待が高まっています。心の動きによって胸がキュンとすることから、心が胸にあると考える人が今も少なくないかもしれません。しかし、それは脳が体と相互関係を結んでおり、心の動きが心臓の働きの変化として表れたことによるのです。脳の働きをヒトの体の中で捉えて研究する必要性を示しています。ヒトはまた、社会的動物ですので、対人関係を結びながら生きています。ですから、イジメや差別がどれほど人を苦しめるかを知らなければなりません。脳の働きを対人関係・社会の中で捉えて研究する必要性も理解頂けると思います。脳の働きは、その中にある1000億もの神経細胞と、それらが作る1000兆個にもおよぶシナプスと呼ばれる繋がりと、それらの刻々とした変化によって担われています。従って、脳の構造と機能の解明には、全国の多数の研究者による1つ1つの地味で地道で辛抱強い研究の積み重ねこそが必要なのです。脳科学が近い将来において、ヒトがヒトとして伸びやかに自由意志と創造性を持って健やかな対人関係を結びながら生きていくための指針を与えるものとなるよう、その推進に力をと念じている昨今です。