年頭のあいさつ(2009年)

【2009年01月05日】

岡 田  泰 伸


 生理学研究所で働き、学ぶ皆さん、新年明けましておめでとうございます。 

 大変な世情の中に明けましたが、本年も基本姿勢を貫きながら、私達に与えられた仕事を力一杯やり続けてまいりましょう。 

 生理学研究所の第1のミッションは、自然科学研究機構の一機関として、人体と脳の働き(ファンクション)とその仕組み(メカニズム)を解明するための先導的・基盤的研究を行うことにあり、これは主として研究所運営費交付金と科研費等の基盤的外部資金によって支えられています。第2のミッションは、大学共同利用機関の一つとして、全国の大学・研究機関との共同研究・共同利用実験を推進することにあり、これは主として特別教育研究経費によって支えられています。第3には、総合研究大学院大学(総研大)の一基盤機関として、大学院生を国際的な生理科学研究者へと育成すると共に、全国の関係分野の若手研究者を育成するというミッションを持っており、これらは総研大運営費交付金と自己資金によって支えられています。 

 本年度に続き来年度も、研究所・総研大両運営費交付金が実質1%の削減となり、更に加えて来年度には特別教育研究経費までがすべて1%減になるという内示が昨年暮に文部科学省から届きました。この状況は基盤研究の推進のみならず、共同利用研究の推進にも大きな困難をもたらしています。加えて、配管の経年劣化による漏水事故多発などに見られる建物・施設関係を中心とするインフラ維持・補修経費についても、上記の自己資金と外部資金に付された間接経費でまかなっていかなければなりませんので、大変厳しい状況が続きます。しかし、困難なときほど、前向きに基本姿勢を貫くという哲学が必要だと思います。 

 研究所がいまその研究の中心対象としているのは脳機能と生体恒常性でありますが、幸いなことに分子・細胞レベルから脳・個体レベルにわたる研究において昨年も大きな成果をあげることができましたが、本年も更にすばらしい成果を得ることができると(昨年末の生理研研究発表会での皆様の発表からも)強く確信しております。共同研究・共同利用についても、年々質と量の両面で向上してまいりましたが、昨年は「多次元共同脳科学推進センター」の新設によりその内容を更に拡げることができ、全国の若手脳科学研究者の育成プログラムの提供も開始することができました。更に来年度は、自然科学研究機構に特別教育研究経費として措置されることになった「ブレイン・サイエンス・ネットワーク(仮称)」という新プログラムも立ち上がり、脳科学研究の全国ネットワークの中心としての役割を果たしていくことが岡崎に求められております。それとも関係して、異なる多分野を跨ぐような若手脳科学研究者の育成や大学院生の生理科学・脳科学教育が私たちに求められていますが、ポスドク数の増加に反してテニュアポスト数の減少という状況に影響されてか研究者志望者数も減り、われわれの生理科学専攻への大学院入学者数も減少しはじめています。本年は、この由々しき問題への対策にも迫られています。私たちの取り組みが広く国民の皆さんに理解と支持を得て、未来の大学院生・若手研究者の母集団である子供たちにも夢と希望を与えることができるよう、広報活動等にも引き続き力をいれてまいる必要があるでしょう。 

 労苦と時間を惜しまないところに必ず稔りがもたらされます。皆様、本年もまた共に力を合わせ、希望を持って仕事を楽しみ、励んでまいりましょう。