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"光沢"を見分ける脳の神経細胞を発見

2012年8月 9日 プレスリリース

内容

 人は、物をみただけで、その“質感”を判別しています。なかでも、「キラキラ」や「ピカピカ」「テカテカ」といった物の“光沢”は、見ただけで脳の中で瞬時に判断していますが、その脳内での仕組みは分かっていませんでした。今回、自然科学研究機構生理学研究所の西尾亜希子研究員、小松英彦教授らの研究グループは、霊長類動物の脳の中に、“光沢”を見分ける特別な神経細胞群があることを世界で初めて発見しました。この脳神経細胞は、物の形や照明によらず光沢を見分けられることができます。本研究成果は、米国神経科学会誌(ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス、2012年8月1日号電子版)に掲載されました。

 研究グループは、同じ形で33種類の光沢をもつ物体をコンピューターグラフィックで作成。この33種類の物体を、ニホンザルに見せたときの脳の活動を記録しました。その結果から、脳の大脳腹側高次視覚野の下側頭葉と呼ばれる部分に、光沢に応じて反応する神経細胞群があることをつきとめました。神経細胞群の中の細胞は役割分担して、鏡面反射や拡散反射などの度合いに応じて、「鋭く輝くもの」、「ぼやけた光沢をもつ物」、「艶のないもの」、といった物の光沢の違いを判別していました。

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 小松教授は、「世界ではじめて、霊長類の脳の大脳腹側高次視覚野にある特殊な脳神経細胞が、“光沢”を見分ける機能を持っていることを明らかにしました。“光沢”は物の質を表す重要な視覚情報で、物の価値判断にも影響を与えます。おそらく進化の過程で獲得された脳の機能だと考えられ、金や銀の美しい輝きを感じる時にも、こうした“光沢”を見分ける脳の仕組みが働いていると考えられます」と話しています。

本研究は文部科学省科学研究費補助金の補助を受けて行われました。

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今回の発見

1.霊長類動物の脳の大脳腹側高次視覚野の下側頭葉に“光沢”に反応する神経細胞群があることを発見しました。
2.鏡面反射や拡散反射の度合いに応じて、「鋭く輝くもの」、「ぼやけた光沢をもつ物」、「艶のないもの」、といった物の光沢の違いを判別していました。

図1  異なる33種類の“光沢”をもつ同一物の画像(コンピューターグラフィックス)

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同じ形ながら異なる33種類の光沢をもつ物をコンピューターグラフィックで作り出しました。この33種類の物を見せた時のニホンザルの脳の反応を記録しました。

図2 “光沢”を判別する神経細胞の一例

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“光沢”を判別する神経細胞の電気応答の一例。この神経細胞は、形によらず、「鋭い反射を持つ、つるつるした表面の物体(鋭く輝くもの)」の画像に強く反応しました。このように特定の光沢を見分けて反応する細胞が多数見つかりました。

図3 “光沢”の判別の分類

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記録された“光沢”を判別する神経細胞群の活動を分析して、これらの神経細胞が、どのように光沢を見分けているかを分類した図。この図では、左の方に「鋭く輝くもの」、右下は「ぼやけた光沢をもつもの」、右上は「艶のないもの」が集まっており、これらの神経細胞の活動がさまざまな光沢を系統的に表現していることが分かります。

図4 (補足説明)3種類の反射パラメーターの変化による“光沢”の変化

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入射光に対する拡散反射、鏡面反射、ラフネス(広がり)という3種類の反射パラメーターの組み合わせによって、モノの“光沢”を変化させることができます。

この研究の社会的意義

霊長類の脳の“光沢”を見分ける優れた機能の解明へ
世界ではじめて、霊長類の脳の大脳腹側高次視覚野にある特殊な脳神経細胞群で、“光沢”を見分けるという優れた機能を持っていることを明らかにしました。将来的には、こうした生体の優れた質感認識機能を模擬した自動的・効率的な質感分類・同定システムへの応用、濡れているなどの表面状態を瞬時に察知して適応的に動作・行動するロボットシステムへの応用、その他、様々な分野(アート、エンターテイメント、工業デザイン、広告、デジタルアーカイブなどの)において、豊かな質感の生成・再現を実現するための技術の開発などへ繋がると期待されます。

図5  脳の中の特定の神経細胞で“光沢”を見分けている

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脳の大脳腹側高次視覚野の下側頭葉には、「鋭く輝くもの」、「ぼやけた光沢をもつもの」、「艶のないもの」など光沢に応じて反応する神経細胞群があることを発見しました。今回発見された“光沢”を見分ける仕組みをつかって、この3つの物体の光沢の違いを判別していると考えられます。

論文情報

Neural selectivity and representation of gloss in the monkey inferior temporal cortex
Akiko Nishio, Naokazu Goda, Hidehiko Komatsu
ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス 8月1日号電子版

お問い合わせ先

<研究について>
自然然科学研究機構 生理学研究所
教授 小松 英彦(コマツ ヒデヒコ)
研究員 西尾亜希子(ニシオ アキコ)
Tel:0564-55-7861 / 7862  Fax:0564-55-7865 
E-mail:komatsu@nips.ac.jp

<広報に関すること>
自然科学研究機構 生理学研究所 広報展開推進室 
TEL 0564-55-7722、FAX 0564-55-7721 
pub-adm@nips.ac.jp

 

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