日 時 | 2009年01月26日(月) 12:20 より 13:00 まで |
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講演者 | 畑中 伸彦 助教 |
講演者所属 | 生理学研究所 生体システム研究部門 |
お問い合わせ先 | 窪田 芳之 (大脳神経回路論) |
要旨 |
大脳基底核は大脳皮質からの入力を受け、視床を介して大脳皮質、とくに前頭葉に戻るループ回路を形成している。ドーパミンニューロンの欠落によってパーキンソン病を発症すると強い運動障害が出現することからも、この大脳基底核を巡るループ回路は随意運動の発現やその制御に重要な役割を果たしていることは明らかである。また大脳基底核は運動の学習や行動の選択など、より高次な脳機能にも関与していることが示されている。淡蒼球内節は大脳基底核の出力核で、複数の大脳基底核内部経路からの情報が収束しており、その活動が大脳皮質-大脳基底核ループの機能の多くを表現していると考えられている。その淡蒼球内節には興奮性、抑制性の相反する入力があり、一つは視床下核を経由するグルタミン酸作動性の興奮性入力で、もう一つは線条体と淡蒼球外節を経由するGABA作動性の抑制性入力である。しかし、この相反する入力が実際の運動中にどのように作用しているかは明らかではない。われわれは、遅延期間付き上肢運動課題を訓練したニホンザルの大脳皮質運動野に刺激電極を埋入し、淡蒼球ニューロンの入力源を同定したのち、運動課題を遂行させその活動様式を記録し、その後に ganazine(GABAAレセプターアンタゴニスト)や、CPP(NMDAレセプターアンタゴニスト)とNBQX(AMPA/kainateレセプターアンタゴニスト)の混合物を記録している細胞周囲に微量注入し、大脳皮質電気刺激への応答性と運動中のニューロン活動がどのように変化するか観察した。その結果、淡蒼球内節ニューロンの運動に関連した活動は、イオンチャンネル型のグルタミン酸作動性の興奮性入力とGABA作動性の抑制性入力の両者を反映していることが示唆された。 |