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研究活動

セミナー詳細

2009年01月09日

下側頭葉皮質で表現されているもの

日 時 2009年01月09日(金) 16:00 より 17:00 まで
講演者 山根 ゆか子 先生 
講演者所属 理研BSI-トヨタ連携センター 研究員
お問い合わせ先 小松 英彦 (感覚認知情報部門)
要旨

下側頭葉皮質は視覚的に提示された物体像によく反応するニューロンが多く存 在することが知られており、視覚情報処理の最終段階と考えられている。下側 頭葉皮質ニューロンは単純な線分に対しては反応せず、たとえば顔のような複 雑な形に対して反応することから、ニューロンが抽出している図形情報が線分 の長さや傾きのような簡単なパラメータでは表現できないことが予想される。 そこで、下側頭葉皮質においては、物体は、複数の異なる図形情報からなる多 次元空間(shape space)で表現されていると考え、この多次元空間において効率的にニューロンの視覚刺激に対する選択性を調べるために、進化的アルゴリズムを用いた探索システムを開発した。本研究では、物体の3次元形状に注目し、陰影と両眼視差を加えた3次元物体像を視覚刺激として用い、固視課題遂行中の覚醒サルの下側頭葉皮質ニューロンから記録をとった。刺激の3次元形状を決めるパラメータを、ニューロンの活動を記録しながら応答に応じて変化させ、新しい刺激セットを次々にオンラインで用意し、これを繰り返した。得られた個々のニューロンの個々の刺激に対する発火パターンを解析した結果、多くの細胞が刺激の3次元形状の一部の組み合わせに応じていることが示唆された。このことは、これまでよく調べられてきた2次元パターンのみならず、3次元の物体形状も下側頭葉皮質で表現されている可能性を示すものである。