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セミナー詳細

2015年04月02日

異なるスケールを統合する、初期視覚野単一細胞における両眼視差の検出

日 時 2015年04月02日(木) 11:00 より 12:00 まで
講演者 馬場 美香先生
講演者所属 大阪大学 大学院生命機能研究科
場 所 1階セミナー室
お問い合わせ先 小松英彦(感覚認知情報研究部門 内線7861)
要旨

 我々は、2次元の網膜画像から鮮明な3次元世界を知覚することができる。我々の脳内の視覚システムは様々な手がかりを用いて3次元的な奥行きを推定しているが、中でも重要なものが左右の網膜画像のずれ、「両眼視差」である。両眼視差の検出は初期視覚野とよばれる領野から始まるが、この領野の神経細胞は、それぞれが異なるスケールの画像特徴に選択性を持ち、粗い画像特徴と細かい画像特徴は別々の細胞において処理されている。しかし、一般に自然な外界からの視覚入力は幅広いスケールの画像特徴を含んでおり、両眼視差による左右間での網膜像の位置ずれは、その様々なスケールの成分(すなわち様々な空間周波数成分)すべてにおける同じ大きさの位置ずれとして特徴付けられる。従って、より正確に信頼性高く機能するために、異なるスケール、すなわち異なる周波数チャンネルからの情報統合が以降の処理として必要であると考えられる。このような情報の統合が初期視覚野の両眼視差選択性細胞で起こっているかどうかを調べるため、麻酔不動化したネコ17野において実験を行った。実験では、両眼周波数組み合わせ領域における神経細胞の両眼性応答を、左右眼間で様々な周波数・位相の組み合わせのサイン波フラッシュ刺激を用いて計測した。
 計測により得られた74個の細胞について両眼周波数相互作用マップを解析した結果、一部の複雑型細胞において異なる周波数チャンネルの統合が起こっていることがわかった。またこの統合は、周波数バンド間で最適視差が同一となるように行われていることも示唆された。これらの結果から、より正確な両眼視差検出を可能にするために、粗いものから細かいものまで異なるスケールからの情報の統合が、既に初期視覚野から始まっていることが示された。