所長招聘セミナー

日 時 2009年02月20日 13:00~
場 所 1階会議室
演 者 田渕 克彦 博士
(Neuroscience Institute, Stanford University Medical School)
演 題 シナプス機能と自閉症:Neuroligin/Neurexin の役割り
要 旨

シナプス後終末局在性細胞接着因子Neuroliginは、シナプス間隙においてシナプス前終末局在性細胞接着因子Neurexinと結合することにより、シナプスの形成および機能獲得に寄与していると考えられている。

近年、neuroligin遺伝子の変異が複数、自閉症患者から発見された。このうち、 Neuroligin-3の451番目のアルギニンをシステインに置換する変異(neuroligin-3 R451C)は、Neuroligi-3 タンパク質の膜表面への局在を妨げ、正常な機能を障害していると考えられている。われわれはNeuroligin-3変異とシナプス機能、および自閉症との関連を調べることを目的とし、この変異を有するノックインマウスを作成し解析を行った。Neuroligin-3 R451C変異マウスは正常に発育し、形態学的異常は認められなかった。電気生理学的にシナプス機能を解析したところ、変異マウスではGABA作動性シナプス機能の亢進が見られた。行動学的解析を行った結果、このマウスは自閉症患者特有の、社会行動の異常が見られた。驚いたことに、変異マウスでは、空間学習記憶能力がすぐれている結果が得られた。これは、自閉症患者で時折みられる、サバン症候群との関連から興味深い。これらの結果から、Neuroligin-3のR451C置換は、 GABA作動性シナプスの異常をきたし、この変異が単独で自閉症を起こしうることが示唆された(Tabuchi et al., Science 2007)。本セミナーでは、われわれのNeurexinに関する最新の研究についても概説する。

連絡先 脳形態解析研究部門 重本 隆一 (内線5278)