部門公開セミナー

日 時 2011年12月28日 15:00~15:45
場 所 山手共通セミナー室 3号館2階西
演 者 宮崎直幸博士(大阪大学蛋白質研究所CREST研究員)
演 題 クライオ電子線トモグラフィーによる細胞内分子分解能構造解析
要 旨

構造生物学においては、生体分子が実際に機能している細胞内で構造を決 定することやそれらの分子間相互作用を直接見ることが、最終目標の一つだ と考えられる。クライオ電子線トモグラフィーは、細胞内での生体分子の局 在と構造を同時に観察出来る現在唯一の方法ではあり、その目標を達成する 可能性を秘めているが、ハードウェアから解析まで、いまだ発展途上である。
我々は、本手法を用いて、分子の形状が分かる程の高分解能で細胞内超分子 複合体やウイルスの構造を観察する為の観察方法の構築に取り組んでいる。 そして、生体分子を実際に機能している細胞内で構造を決定することにより、 機能している複合体状態やそれらの相互作用様式に関する知見を多数得てい る。本セミナーにおいては、我々が最近行った、細胞間移動をしているウイ ルスやミドリムシの光センサーの構造解析等を例にして、本手法を使った細 胞内での構造解析の現状を紹介したいと考えている。
 ウイルスの細胞内侵入や細胞間移動では、電顕グリッド上で培養した細胞 にウイルスを感染させ、液体エタンにより瞬時に凍結する(浸漬凍結法)こ とで、その構造を水和した天然に近い状態で、尚かつ従来の方法よりも高い 解像度で見ることが可能となった。一方、ミドリムシの光センサーの構造は、 CEMOVIS(Cryo-electron microscopy of vitreous sections)法によって観 察することに成功した。CEMOVIS法とは、非晶質に凍結した試料をクライオミ クロトームを使用して超薄切片に加工してクライオ電子顕微鏡で観察する手 法である。このミドリムシの光センサーは、副鞭毛体と呼ばれ、ミドリムシ の鞭毛の尾部で光センサータンパク質であるPACと呼ばれるタンパク質が集ま った細胞内小器官である。我々は、CEMOVIS法を用いて、ミドリムシの光セン サーオルガネラの構造が、PACが結晶状に並んだものであることを明らかにし た。

連絡先 形態情報解析室/電子顕微鏡室(併)村田和義 准教授(kazum@nips.ac.jp)