昼食セミナー

日 時 2012年01月30日 12:20~13:20
場 所 職員会館2階大会議室
演 者 江藤 圭 先生(生体恒常機能発達機構研究部門)
演 題 一次体性感覚野を中心とした慢性疼痛メカニズムの解明
要 旨

慢性疼痛は末梢組織の炎症や末梢神経系の損傷がきっかけとなって生じ、その発生・維持過程に脊髄を含む中枢神経系の異常が関与していることが示唆 されている。大脳皮質において、侵害刺激に対して複数の領域が応答し、慢性疼痛時にはこれらの脳領域活動が亢進することが機能的 MRI(fMRI)を用いた研究で明らかにされ(Moisset and Bouhassira, 2007)、単一の脳領域のみならず、複数の脳領域間の相互作用も慢性疼痛処理に関与する可能性が示唆されている。大脳皮質の中でも一次体性感覚野 (S1)は痛みの強度、部位、刺激時間を認知するのに重要な役割を担っており、慢性疼痛時には、触刺激で誘発される活動が亢進することが機能的核 磁気共鳴法(fMRI)を用いた研究で明らかになっている(Endoら,2008)。S1は6層構造からなり、興奮性神経細胞と抑制性神経細胞が 存在する。その中でも第2/3層興奮性神経細胞は、末梢からの痛み情報を統合し、S1の第5層細胞や、他の大脳皮質領域へと伝達する。一方、抑制 性神経細胞は興奮性神経細胞の活動を調節することにより、感覚情報処理に関与する。しかし、これまで、慢性疼痛時にこれらの細胞群の活動がどのよ うに変化し、疼痛行動にどのように関与するか不明であった。そこで、本セミナーでは、2光子顕微鏡を用いたin vivo カルシウムイメージングや行動実験を組み合わせて得られた慢性疼痛時の興奮性、抑制性神経細胞の役割についての知見を紹介したい。

連絡先 石橋 仁(生体恒常機能発達機構研究部門)