昼食セミナー

日 時 2012年05月08日 12:20~13:20
場 所 山手3号館2階西 共通セミナー室
演 者 横井紀彦 先生 (生理学研究所 生体膜研究部門)
演 題 LGI1変異によっておこるてんかんの分子病態の解明
要 旨

"てんかん"は罹患率1%程度の頻度の高い神経疾患であり、激しいけいれんや意識消失、 時には幻覚・幻聴などを伴う。てんかんは神経細胞および神経回路の異常な興奮によ り引き起こされると考えられているが、その病態、病因は不明な点も多い。我々はラッ ト脳からAMPA型グルタミン酸受容体に関連したシナプス膜蛋白質複合体を生化学的手 法により精製し、ヒト家族性側頭葉てんかんの関連遺伝子LGI1とADAM22を主要構成分 子として見出した。また、分泌蛋白質LGI1が膜蛋白質ADAM22およびADAM23のリガンド として機能し、AMPA受容体機能を促進することを見出した。さらに、LGI1ノックアウ トマウスが生後三週以内にてんかん発作の重積により全て死亡することを示し た(Fukata et al. Science 2006; PNAS 2010)。興味深いことに、この表現型 はADAM22、ADAM23ノックアウトマウスの表現型模写(phenocopy)であり、 LGI1/ADAM22/ADAM23複合体はシナプス伝達制御の重要なモジュールであると考えられ る。しかし、LGI1/ADAMによるシナプス伝達制御、およびてんかん発症との関連は未だ 不明な点が多い。本セミナーでは、1)ヒト家族性てんかん患者に見られるLGI1変異体 のマウス脳内での性状解析と2)LGI1ノックアウトマウスにおけるてんかんの責任回路 の探索について、これまで得られた知見を紹介し、LGI1の分子機能欠損とてんかん発 症の関連について議論したい。

連絡先 深田 優子(生体膜研究部門)