昼食セミナー

日 時 2012年07月20日 12:20~13:20
場 所 山手3号館2階 共通セミナー室
演 者 清水 健史 先生(生理学研究所・分子神経生理研究部門)
演 題 メカノトランスダクションによるES細胞の機能調節機構
要 旨

近年、液性因子のみならず、機械的刺激によって活性化されるシグナ ル(Mechanotransduction)が細胞の性質を制御することが明らかとなってきており、注 目を集めている。中枢神経系の再生医療への応用が可能な多能性幹細胞であるマウ スES細胞をモデル細胞として用い、その機械的刺激に対する応答、及び活性化される シグナリング経路について解析を行なった。まず異なった弾性硬度をもつポリアクリ ルアミドゲル機質上でES細胞を培養したところ、特定の硬さの機質上からES細胞が抗 力を受けた場合に、ES細胞の形態が伸長し、Src-ShcA-MAP kinase経路が活性化され、 ES細胞の分化が誘導されることを見出した。次に、GSK3とMAP kinaseに対する2つ のinhibitior (2i) をN2B27培地に添加した状態下では、血清とLIFを添加しなくても マウスES細胞の未分化性が維持されることが知られているが、弾性の柔らかい機質上 で2i培養を行うと、ES細胞が伸長し、その形態変化に伴ったFAK-Srcの活性化を介して 分化が誘起されることが分かった。最後に、Mechanotransduction経路を遮断すること によってES細胞の多分化能が維持可能かどうかを検討した。GSK3とSrcのDual inhibition (Alternative 2i)を行うと、血清とLIF 非存在下においてもES細胞の多分 化能を維持することができ、さらに非常に高い効率でマウス初期胚からES細胞を樹立 できることが明らかとなった。これらの結果から、液性因子のみならず、 MechanotransductionによってES細胞の機能を制御できる可能性が示唆されるとともに、 本研究で発見したGSK3とSrcのDual inhibition (Alternative 2i)は、ES細胞のオペレー ションに広く応用することが可能である。

連絡先 深田 優子(生体膜研究部門#5873)