昼食セミナー

日 時 2012年10月23日 12:20~13:20
場 所 山手3号館2階 大会議室
演 者 牛丸 弥香 博士(生理学研究所・大脳神経回路論研究部門 研究員)
演 題 徐波状態における新皮質錐体細胞と視床細胞の発火パターン
要 旨

大脳皮質の神経活動は睡眠・覚醒において大きく変わると考えられている。睡眠時の脳波は同期した徐波を示すのに対し、覚醒時には脱同期化する。徐波時には皮質細胞の膜電位は脱分極状態(Up状態)と過分極状態(Down状態)の間で振動している。
 私は、前頭皮質・視床のニューロンタイプごとに皮質Up/スピンドル生成や脱同期化機構への関与が異なると考え、発火の振動や脳状態依存性を細胞タイプごとに比較検討した。麻酔下のラット前頭皮質5層では視床投射細胞を同定し、視床ではVA/VM核、VL核、視床網様核からユニット活動を記録した。解析の結果、以下の事が分かった。
(1)VA/VM核と視床網様核の細胞の中にはUpの立ち上がり付近で選択的に発火するものがある。
(2) 視床細胞は皮質細胞と比べて、Up内で時期選択的に発火することが多い。
(3)視床細胞と皮質細胞ではスピンドル周期の異なる位相で発火する。
(4)Up状態と脱同期化時の発火は異なる。これらのことから、皮質-視床-皮質のサブネットワークは徐波やスピンドル波の周期で分化しており、基底核から入力を受けるVA/VM核はUp状態の開始と深く関与していることが示唆される。また、Up状態と脱同期化はネットワーク内で異なる脱分極状態であると考えられる。

連絡先 深田 優子(生体膜研究部門#5873)