部門公開セミナー

日 時 2013年01月31日 11:00~12:00
場 所 山手3号館2階西 共通セミナー室
演 者 片桐 秀樹 先生(東北大学大学院医学系研究科、CREST)
演 題 Metabolic Information Highways
~個体レベルでの糖代謝・エネルギー代謝調節機構とその活用によ る治療法開発~
要 旨

血糖値や体重は、一つの臓器だけで決まるものではなく、個体全身の臓器が最適 な状況を作るよう連携するシステムが必要である。我々は、世界に先駆けて、神経系を介した仕組みがこの全身の臓器・組織間の協調的代謝調 節機構として重要な役割を果たしていることを見出した。具体的には、1)脂肪組織から食欲を調節する求心性神経シグナル(Cell Metab 2006)、2)エネルギー蓄積状態に応じ、基礎代謝を調節する肝臓からの神経シグナ ル(Science 2006)、3)肥満の際に膵β細胞の増殖を惹起する肝臓からの神経シグナル(Science 2008)、4)過栄養に際に適応熱産生を落とし栄養分の備蓄につなげる肝臓からの倹 約神経シグナル(Cell Metab 2012)があげられる。 これらの臓器間神経ネットワークは、体に備わった体重調節機構・糖代謝調節機 構として、多臓器生物での個体としての恒常性を保つための根本的な役割を担っている(Circ Res 2007)とともに、その破綻やオーバードライブが糖尿病・肥満・高血圧などの代謝疾 患発症の機序に関与していることが明らかとなりつつある(Eur Heart J 2012)。さらに、これらの体に備わった全身での代謝調 節機構を制御することができれば、これらの代謝疾患を克服することが可能となることが期待される。また、血管による臓器間ネットワークの 制御も、健康長寿につながるアンチエイジング法となりうることも明らかとなりつつある(Circulation 2012)。本セミナーでは、臓器間ネットワーク機構発見のいきさつからその重要性の 証明、さらには、その可能性について論じてみたい。

連絡先 箕越 靖彦(生殖・内分泌系発達機構研究部門#5560)