所長招聘セミナー

日 時 2013年02月01日 15:00~16:00
場 所 山手3号館2階西大会議室
演 者 白根道子 先生(九州大学 生体防御医学研究所 分子医科学分野)
演 題 神経細胞内膜系の機能と制御機構
要 旨

細胞内膜系は、細胞内における複雑な生理機能を秩序立てて遂行するために重要な働きをしている。われわれは神経細胞における細胞内膜系の機能と制御機構に興味をもっており、その個体における生理的な役割や、その不全が引き起こす病態の解明を目指している。具体的には以下の2点に焦点を当てている。(1)神経細胞内における小胞輸送の制御機構と神経機能への関与の解明。われわれが発見したプロトルーディン(protrudin)は、神経細胞の極性輸送を制御する膜タンパク質で、軸索輸送や樹状突起輸送の制御に関わっている。この分子の発生過程における役割や、高次脳機能への関与を検討している。(2)細胞内膜系の機能障害による神経変性疾患の病態の解明。プロトルーディン変異は遺伝性痙性対麻痺の発症に関係しているが、小胞体の膜構造の異常が原因であることがわかってきた。またプロトルーディン結合タンパク質のFKBP38の機能喪失は、アポトーシス異常により神経管閉鎖不全を起こす。プロトルーディン-FKBP38系による神経内膜系の制御機構とその異常による病態の解明は、神経系の生理と病理の統合的理解に繋がると期待される。

連絡先 鍋倉淳一(生体恒常発達機構研究部門 内線7851)