昼食セミナー

日 時 2013年07月17日 12:00~13:00
場 所 山手地区 9Fセミナー室B 3号館9F東
演 者 秋元 望 先生(生理学研究所 神経シグナル研究部門 日本学術振興会特別研究員)
演 題 神経障害性疼痛発現におけるCCL-1の関与
要 旨

慢性疼痛の一つである神経障害性疼痛の発現に、脊髄グリア細胞やサイトカインが関与することが報告されている。本研究では、神経障害性疼痛の症状の一つであるアロディニア発現に、ケモカインの1つであるC-C motif ligand 1 (CCL-1)が重要であることを発見した。アロディニアのモデルとして坐骨神経を部分結紮したマウスを使用した。結紮直後のマウスの脊髄後根節においてCCL-1の発現上昇、および脊髄においてCCL-1の受容体・CCR-8の発現が上昇していた。CCL-1を正常なマウスの脊髄腔内に投与すると、一時的な強いアロディニアが発現し、逆に結紮前からのCCL-1中和抗体の投与またはCCR-8ノックダウンマウスにおいては、結紮によるアロディニアの発現は抑制された。アロディニアはNMDA受容体の拮抗薬MK-801により抑制され、CCL-1は脊髄後角の自発性グルタミン酸放出を増強させることが電気生理学的解析から判明した。CCL-1を髄腔内に単回投与したところ、脊髄においてNMDA受容体サブユニットのリン酸化、グリア細胞や炎症性サイトカインの発現上昇が引き起こされることが示唆された。これらの結果より、CCL-1は神経障害によって産生され、脊髄においてミ興奮性シナプス伝達の促進やグリア細胞の活性化を引き起こすことによって、神経障害性疼痛の発現に関与することが示唆された。

連絡先 古江 秀昌(神経シグナル#5887)