部門公開セミナー

日 時 2014年07月16日 16:00~17:30
場 所 生理学研究所(明大寺地区)1Fセミナー室ABMyodaiji, 1F seminar room
演 者 正水 芳人先生,田中 康裕 先生Yoshito Masamizu, PhD & Yasuhiro Tanaka, PhD(基礎生物研究所National Institute for Basic Biology)
演 題 運動学習中に大脳皮質の一次運動野でおきる層特異的な神経活動変化について
要 旨

本セミナーは日本語で行われます。
This talk will be given in Japanese.

特定の運動を繰り返すことで、学習が成立し運動課題の成功率が高くなるとき、 大脳皮質の一次運動野では、神経細胞集団の活動による運動情報の符号化が改善 されていくことが知られている。一次運動野は、脊髄への運動出力を第5b層から 出すが、その前に2つの中間層として第2/3層と第5a層を持つ。どちらの層も様々 な脳部位から入力を受け大脳皮質間投射があるが、第5a層はそれに加えて皮質下 への投射もあり、これらの2層で神経細胞集団の再編成は異なると考えられる。 そこで我々は、毎日1時間、2週間連続でレバー引き運動課題をマウスに行わせ て、課題実行中に2光子カルシウムイメージングを一次運動野の第2/3層と第5a層 で行った。神経集団の再編成を見るため、細胞集団・及び単一細胞の神経活動か らレバー軌道をサポートベクター回帰により予測した。さらに、神経活動から予 測されたレバー軌道と実際に記録されたレバー軌道とのコピュラ密度を推定し、 予測精度を相互情報量によって評価した。第2/3層では神経細胞集団によるレ バー軌道の予測精度は全体としてあまり変わらないものの、一部の神経細胞は課 題訓練期間を通して高い予測精度を示した。一方で、第5a層では、細胞集団によ るレバー軌道の予測精度は課題訓練期間を通して改善し、皮質下に投射する細胞 を含む1/3の神経細胞が学習後期における細胞集団による予測精度に貢献するよ うになった。第2/3層の神経回路は学習を通じて、他の領域からのシグナルをう まく統合しながら変化していき、一方で第5a層ではよく学習された運動を表現す る学習回路に関わるようになるものと考えられる。

*Masamizu Y., *Tanaka Y.R., Tanaka Y.H., Hira R., Ohkubo F., Kitamura K., Isomura Y., Okada T., and Matsuzaki M. (*equal contribution) Two distinct layer-specific dynamics of cortical ensembles during learning of a motor task.
Nature Neuroscience, 17, 987-994, 2014.

連絡先 小川 正晃 (認知行動発達機構, tel: 7764)