部門公開セミナー

日 時 2015年01月06日 16:00~17:00
場 所 生理学研究所(明大寺地区)1階 セミナー室
演 者 横井 紀彦 博士(生理学研究所・生体膜研究部門 特任助教)
演 題 シナプス伝達修飾リガンドLGI1の変異体解析によるてんかん分子病態の解明
要 旨

シナプス間の情報伝達効率は使用状況によって柔軟に変化し、記憶や学習の基盤を成すと考えられている。一方、この制御機構の破綻はてんかん等の神経疾患の重要な一因となる。すなわち、「シナプス伝達の制御機構」と「神経疾患の分子病態」の解明は表裏体の関係にある。これまでに私共のグループは、シナプス足場タンパク質PSD-95を含む脳内タンパク質複合体として、てんかん関連タンパク質LGI1リガンド/ADAM22受容体を同定し、LGI1/ADAM22がAMPA型グルタミン酸受容体を介した興奮性シナプス伝達を制御することを見出している。今回、私はLGI1によるシナプス伝達制御機構の生理的意義を明らかにするために、家族性てんかんにおけるLGI1変異体の分子病態を解析した。まず、報告されている34種類のLGI1変異を分泌型変異と分泌不全型変異に分類し、それぞれのLGI1変異体を発現するてんかんモデルマウスを作製した。このてんかんモデルマウス脳に発現する変異タンパク質の性状解析により、LGI1変異によるてんかんがタンパク質構造病(conformation disease)であることを明らかにし、LGI1とその受容体ADAM22との結合不全が本てんかんの分子病態であることを明らかにした。さらに、ケミカルシャペロンによるLGI1構造異常の修復がてんかん治療に有効である可能性を見出した(Yokoi et al. Nat. Med. in press)。すなわち、LGI1-ADAM22結合が、正常な脳機能に必須なシステムであることを示した。今回の発表では、LGI1リガンド/ADAM22受容体によるシナプス伝達の制御機構の全容解明を目指した現在の取り組みも合わせて紹介したい。

連絡先 深田 正紀(生体膜研究部門 #5873)