部門公開セミナー

日 時 2015年02月19日 16:00~
場 所 生理研明大寺地区1階大会議室(Myodaiji, 1F conference room)
演 者 小山隆太 助教(Dr. Ryuta Koyama)(東京大学 大学院薬学系研究科 薬品作用学教室)
演 題 歯状回の神経回路形成機構からみたてんかん発症メカニズム
要 旨

本セミナーは日本語で行われます。
The lecture will be delivered in Japanese.

皮質と海馬を繋ぐ領域である歯状回はPattern separationやPattern completionに関与する脳領域として近年注目されているが、側頭葉てんかんの発作起始に関与する領域としても古くから重要な研究対象領域となっている。我々は、げっ歯類の複雑型熱性けいれんモデルを使用し、歯状回の神経回路再編成に着目しながら、熱性けいれんが将来のてんかん発症や記憶学習機能に影響を与えるメカニズムを解明するための研究を遂行してきた。

てんかん発症への関連について、熱性けいれんが歯状回に異所性顆粒細胞の出現を誘導し、これが将来のてんかん発症に関与することを示した。また、異所性顆粒細胞出現のメカニズムとして、移動細胞への興奮性GABA入力の増強を明らかにし、この原因となるNKCC1共輸送体の機能を利尿薬ブメタ二ドで阻害することにより、てんかんの発症を抑制することに成功した。

記憶学習への関連については、1歳以降に熱性けいれんを発症した場合には、学童期における記憶・学習成績が向上するという興味深い報告があったため、我々はこの現象を実験科学的に追求した。その結果、複雑型熱性けいれんモデルマウスにおいても、熱性けいれん誘導時期依存的に、成体期における歯状回依存的記憶学習テストの成績が上昇することを発見した。なお、成績が上昇したマウスにおいては、歯状回-CA3野間のシナプスの肥大化と数の増加が確認された。

以上の結果は、小児期のけいれんによって誘導される歯状回神経回路の再編成が、将来の脳機能に影響を及ぼす可能性があることを示すとともに、てんかん原生獲得過程をターゲットとした薬物によって将来のてんかん発症が抑制可能であることを実験的に初めて示した。

連絡先 鍋倉 淳一 (Junichi Nabekura) (生体恒常機能発達機構,tel:7851)