アポトーシス死の達成には細胞内ATPレベルの正常以上の上昇が必要である(2005.10)

Zamaraeva MV, Sabirov RZ, Maeno E, Ando-Akatsuka Y, Bessonava SV, Okada Y:
Cells die with increased cytosolic ATP during apoptosis: A bioluminescence study with intracellular luciferase.
Cell Death and Differentiation (2005), 12, 1390-1397


 

 

 

 ネクローシス時には細胞内ATP濃度が著しく減少することはよく知られているが、アポトーシス時におけるその変化は未知であった。 そこで、アポトーシス時の細胞内(細胞質)ATP濃度変化のリアルタイム測定を、HeLa細胞などの種々の細胞の細胞質にホタルのル シフェラーゼを強制発現させて行った。ミトコンドリア刺激を介するアポトーシス誘導剤であるスタウロスポリン、デスレセプター刺激を 介するTNFa、核クロマチン刺激を介するエトポシド、これらのいずれの投与によっても速やかに細胞質ATP濃度は1.25 mMから数mM に上昇することが判明した。このピーク値は約4時間にわたって持続し、その後次第に減少していくが、アポトーシス刺激前よりも高い 値は刺激後約6時間までも続いた。この細胞内ATP高濃度はカスパーゼ3活性化時やDNAラダー形成時にも維持されていた。このア ポトーシス性ATP増は、グルコースを除去して解糖反応を停止させると消失し、この時には細胞内ATP濃度は正常レベルを保っている にもかかわらず、カスパーゼ活性化もDNAラダー形成も完全に阻止されることが判明した。このように、アポトーシス細胞では細胞質 ATPレベルの上昇が見られ、この高いレベルの細胞質ATPがアポトーシス死実行に不可欠であるという驚くべき事実が明らかにされた。 これによって、細胞内ATP濃度を正常レベルに保つことによって、ネクローシス死ばかりでなく、アポトーシス死をも阻止できることがはじ めて示された。