TRPM2チャネルが調節性細胞容積増大機構を担う高浸透圧

活性化陽イオンチャネルHICCの分子実体であると同定

 

細胞器官研究系 機能協関研究部門

 

私たちの体を構成する細胞は、常に一定の大きさを保っています。たとえ、激しい運動による脱水、過剰な塩分や大量な水の摂取等により引き起こされる体液の浸透圧変化によって細胞の大きさの変化を強いられたとしても、自らが細胞外環境の変化を感知して大きさを一定にするように調節しています。体液が高浸透圧状態になると、細胞は縮んだ後、体液に多く含まれるナトリウムイオンを細胞内に取り入れて細胞の大きさを元の状態に復帰します。このメカニズムを調節性細胞容積増大(RVI)機構といいます。この機構は、細胞増殖や細胞死防止や浸透圧検知に大きくかかわっています。このRVIをもたらすNa+流入に、非選択性カチオンチャネルが関与することは20年以上前に示され(Okada & Hazama 1989 News Physiol Sci)、その後Hypertonicity-induced cation channel (HICC)と命名されていましたが、その分子実体は不明のままでありました。今回、ヒト上皮細胞株であるHeLa細胞を用いて、TRPM2チャネルのC末端細胞質Nudix領域一部欠失スプライスバリアント(TRPM2C)がその分子実体であることを発見しました。既にTRPM2チャネルは脳、骨髄、すい臓、心臓など体中のさまざまな器官に発現し、活性酸素種や温度刺激やサイクリックADPリボースなどによって活性化されることが知られておりましたが、本研究によって、高浸透圧刺激においても、HIV感染や癌、U型糖尿病、オキシトシン分泌などに関与する分子であるCD38(サイクリックADPリボースヒドロラーゼ)と結合して相互作用をすることで、活性化されるという新たな機構が示されました。

 

本研究成果は、ドイツ マックスプランク分子生理学研究所 (Frank Wehner教授)と京都大学・地球環境学堂 (沼田朋大助教・森 泰生 教授)との国際的共同研究によるものです。

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