大腸クリプト細胞におけるイオン分泌時の細胞容積調節メカニズムの解明。欧州生理学雑誌の表紙に(2004.9

Hot Topics】

細胞器官研究系機能協関部門(岡田研)からの真鍋健一らの論文が、欧州生理学雑誌 Pflügers Archiv - European Journal of Physiology の9月号に掲載され、その表紙を飾りました。表紙図は、クリプト細胞での分泌刺激時におけるCa2+濃度上昇の部位依存性を示したものです。

論文

Regulatory volume increase after secretory volume decrease in colonic epithelial cells under muscarinic stimulation.

Manabe K, Shimizu T, Morishima S, and Y. Okada.
(Pfl
ügers Arch – Eur J Physiol (2004) 448: 596-604)

Cover illustration: Ca2+ responses to CCh in colonic enterocytes within a crypt isolated from guinea-pig distal colon. A Representative time course of Ca2+ responses to CCh (100 mM) in fundic crypt cells. Each point represents the mean (±SEM) of 6 observations. B Dependence of peak Ca2+ responses to CCh on cell location. The cell position is designated by a number corresponding to a position from the basal region to upper region of a crypt, as depicted schematically. Means, n =5 observations. For details see article by Manabe et al. (2004) Pflugers Arch – Eur J Physiol 448:596-604

要旨

消化管における粘液分泌は消化物の流動性を保つ役割を果たしており、宿主防御機構の一端も担っている。これまでに大腸におけるCl-分泌はクリプト(陰窩)で行われ、分泌時にはクリプト全体の収縮が生じる事が知られていた。しかしながら、クリプト内部の個々の細胞レベルでの細胞容積調節機構については、ほとんど知られていなかった。我々は二光子レーザー顕微鏡システムを用いることにより、モルモット大腸から単離したクリプト内部の1つ1つの細胞を世界ではじめて可視化することに成功し、コリン様分泌刺激によってクリプト基底部近傍の細胞のみが収縮する様子を捉えた。またコリン刺激時のクリプト細胞内Ca2+濃度上昇は、同様に基底部近傍において著しかった。したがって、大腸クリプトにおいては、基底部だけで細胞内Ca2+濃度依存的にCl-が分泌され、分泌性収縮が生じることが明らかとなった。また我々は、そのクリプト細胞が分泌性収縮後、分泌刺激続行中にも細胞容積を回復させることのできる機構を持っていることを明らかにした。更には、この調節性容積増加は、Na+-K+-2Clコ-トランスポータ(NKCC)の働きによる細胞内へのNaCl(とそれに続く水)の取込によってもたらされることも明らかにした。