味覚誘発脳磁場計測:異なる味濃度と味質への応答

 

小早川達1、斉藤幸子1、金田弘挙1,2、綾部早穂3,1、小川尚4

(1生命研、2サッポロビールKK、3筑波大, 4熊本大医)


我々は味刺激によって生じる脳磁場の計測を行い、ヒトの大脳皮質第1次味覚野(area Gを明らかにしてきた。今回は、異なる濃度及び味質の違いの対する味覚誘発磁場の特徴について、これまで報告したものに、被験者および濃度段階を増やして検討を行った。被験者は5人、濃度段階は0.03、 0.1 、0.3、 1 M のNaCl の4段階とした。64チャンネルのホールヘッド型の脳磁場計測装置を用い、被験者の舌先端中央部に味刺激と洗浄用の純水を交互に提示した。その結果、 0.1 、0.3、 1 M のNaCl の間ではarea G の活動が生じ始める潜時は変わらないが、濃度が増すにつれて磁場応答とダイポールの大きさが有意に大きくなることがわかった。味質の検討では、3 mM Na-saccharin (または 3 mM saccharin )を用い、その甘味強度に類似した強さの塩味強度を感じる食塩を実験に用いた濃度段階の中から被験者毎に選び、主観的に等強度の甘味と塩味による誘発磁場を比較した。その結果、潜時に有意な差がみられ、甘味の方が塩味より長いことがわかった。