脳磁図による遷延性意識障害患者の残存脳機能評価

 

広南病院療護センター,東北大学脳神経外科*,エレクタ(株)**

菅野彰剛,中里信和*,藤原 悟,永松謙一*,畑中啓作**,

吉本高志*


遷延性意識障害患者の治療では,脳の残存機能を正しく評価した上で,それぞれの患

者に適したリハビリテ−ションを計画できれば理想的である.そこで,MEGを用いて

,体性感覚・聴覚・視覚それぞれに対応した大脳皮質活動を時空間的に評価した.症

例は交通外傷後の遷延性意識障害患者16例で,減圧開頭術による頭蓋の広範な部分欠

損例を3例含む.誘発磁界の計測にはヘルメット型脳磁計(Neuromag 122)を用い,

信号源はMR解剖画像との比較で解析した.各誘発反応ごとに,正常の反応潜時や磁界

分布パターンを認めた症例がある一方で,多くの症例では障害に応じた一側もしくは

両側性の異常所見が認められた.これまでは遷延制意識障害症例の重傷度を臨床的ス

コアを用いるなどして評価してきたが,MEGを用いることにより感覚種別ごとの脳機

能の客観的な評価が可能である.さらにMEGは,頭蓋骨欠損や広範な脳損傷による頭

部導電率の著しい不均一性によっても,高い空間分解能が保たれるのが特徴で,頭部

外傷例の評価に特に適している.またヘルメット型脳磁計は短時間での全頭部計測が

可能であり,高度意識障害患者にも適する.今後は症例ごとの脳残存機能評価に基づ

き,具体的なリハビリテ−ション計画を行いたい.

 

 

 

聴覚誘発電位と磁場に対する刺激間隔と休憩の効果

 

鬼塚俊明1)2)、二宮英彰1)、佐藤栄剛1)、山本智矢3)、田代信維1)

1) 九州大学医学部 神経精神医学教室

2) 白十字病院

3) 九州大学医学部 耳鼻咽喉科学教室

 

聴覚P50は重畳電位である可能性があると思われる。この仮説を検証するため、刺激間隔 と休憩を操作し、P50、P50m、N100、N100mを同時記録した。健常右利き成人12名(平均25歳、男性6名、女性6名)を対象とした。4条件で聴覚誘発反応を記録した:(1) 1.5 s/rest、(2) 1.5 s/successive、(3) 0.5 s/rest、(4) 0.5 s/successive。各条件とも聴覚刺激を880回呈示した。P50、N100、P50m、N100mの潜時と振幅、それらの双極子を調べた。P50振幅には刺激間隔の有意な効果を認めなかったが、  P50m振幅は刺激間隔が0.5sの条件で減少した。一方、N100とN100m振幅は刺激間隔が0.5 sの条件で減少し、休憩を入れた場合、増大した。P50mの双極子はN100mの前方で若干深部に推定され、両方とも聴覚一次皮質に推定された。これらの結果はP50の電位に両側側頭葉上面以外の電位、central structureの電位がP50に関与し 、P50は重畳電位であることを示唆している。