絶対音感を持つ音楽家の聴覚皮質の活動

 

平田恵啓、栗城真也 (北海道大学電子科学研究所)、クリスト・パンテフ (ミュンスター大学)


絶対音感を持つ音楽家の側頭平面は左側が有意に大きいが、この解剖学的な違いが聴覚野の機能面にも現れるのかを、脳磁界計測により評価した。刺激はピアノ音のC4,C6,E6とピアノ音の包絡線を模倣した純音(C5p)とノイズバースト(NB)とした。被験者は絶対音感を有する音楽大学生11名(AP)と、音楽経験のない女子大学生11名(NAP)で、全員右利きであった。実験はE6を数えるoddball課題とした。被験者の片耳に音刺激を与え、反対側から聴覚誘発脳磁界を記録した。E6を除く4刺激音の応答の信号源推定を行った。

 全被験者からピアノ音と純音に対する脳磁界応答が観測された。N100mのピーク潜時は最高音のC6で顕著に短かく、NBに対するN100mの振幅は他の刺激に比べて小さかった。左右半球を比較すると、NAPは活動位置の中心が前後方向でほぼ同位置であるのに対し、APでは左側頭で右よりも約8mm後方に推定された。NBの推定位置は、APの左右ともに他の音に比べ約6mm後方に推定された。