周辺刺激による明暗コントラスト抑制現象の解析

 

大谷芳夫1・岡村昇一2・谷川昌司3・吉田佳一2・吉川健治4・高梨芳彰5・

江島義道3・外山敬介4

1 京都工芸繊維大学工芸学部

2 株式会社島津製作所基盤技術研究所

3 京都大学大学院人間・環境学研究科

4 京都府立医大第2生理学教室

5 京都府立医大神経内科


明暗刺激(テスト刺激)に対するコントラスト感は周辺の他の刺激(マスク刺激)の影響を受けて変化する。一般に、高コントラストのマスク刺激と共に提示されたテスト刺激は、単独提示された場合に比べコントラストがより低いように知覚される。本研究ではこの現象に寄与する脳内過程を解明するために、脳磁測定と精神物理学的測定の結果を比較検討した。脳磁測定では、単独提示に比べマスク刺激を付加した条件で第1次視覚野に見られるon反応が小さくなるが、単独提示とは異なり反応の減少に伴う潜時の増大は見られないことが示された。精神物理学的測定では、単独提示及びマスク刺激(コントラスト80%)を付加した条件でテスト刺激のコントラストを変化させ、見かけのコントラストを測定した。その結果、抑制効果は低コントラスト領域で大きく、コントラストの上昇と共に減少することが明らかとなった。これらの結果は、周辺抑制が局所的なコントラスト情報抽出過程の特性では説明されないことを示唆するものである。