ルール照合的タスクとフリーイマジネーションタスクによる記憶想起活動源の経時的運動経路の比較

 

嘉悦 勲1,森 高之1,飯田大介1,須谷康一3,内田熊男1,外池光雄2

近畿大学理工学部1,電総研大阪ライフエレクトロニクス研2、(株)シード3


ペンフィールドの侵襲的研究によって、側頭葉に記憶想起の起源が存在すると推察される。また、佐々木教授のgo−nogo実験などによって、前頭葉に記憶を統合、判断して意志決定を行う中枢があると推定される。今世紀初の作家マルセル・プルーストは、「失われた時を求めて」において我々が意志的に記憶を想起しようとすると、常に記憶の必要“断片”しか得られないが、偶然の感覚(例えばお茶に浸したマドレーヌの味)に誘発されて無意志的に想起された記憶は、過去のある“全体”をよみがえらせ、創造的な喜びを与えると結論した。

 ダルヴィングは、記憶をエピソード記憶と意味記憶に分類したが、我々の記憶の特徴はすべての記憶が刻々エピソード的文脈として形成、貯蔵されることである。プルーストのいう“全体”とは、この文脈のことであろう。我々は、暗算、しりとりのように意志的にルールを照合しつつ行う想起タスクと、フリーイマジネーションのように選択判断が介入しにくい想起とを被験者に行わせてMEGを測定、解析し、前者ではダイポールの経時的運動が、前頭葉と側頭葉の間を比較的単調に往復するのに対し、後者ではダイポールが常に広範囲に分散することを観測したので報告する。