顔の認知及びその加齢変化
中村昭範,山田孝子*,阿部祐士*,堀部賢太郎*,加藤隆司,伊藤健吾,
加知輝彦*,中村克樹**,佐藤暢哉**
長寿研生体機能研究部,*国立中部病院神経内科,**京都大学霊長類研究所
顔の認知過程についてMEGを用いて分析し、その加齢変化についても併せて検討した。
[対象及び方法] 対象は若年成人15名(男11、女4名,19ー38才)、及び中高齢者7名(男2、女5名,51ー75才)。視覚刺激として、ヒトの顔、顔を格子状にスクランブルしたもの、果物の写真をそれぞれ30%の頻度で、緑色の十字架を10%の頻度でランダムに呈示し、緑色の十字架に対してボタンを押すように指示した。誘発磁界はBti社製74 channel脳磁計を用い、sensorを前頭部と後頭部、または両側側頭部にあてて記録した。[結果] 1)刺激の種類に関係なく潜時約100ms前後に誘発される磁界成分100mと、顔刺激に特異的に強く誘発される磁界成分160mを認め、100mは一次視覚野に電源が推定され、160mは紡錘状回およびその近傍に電源が推定され、多くの被検者で右側有意であった。 2)100mの潜時は若年成人群では102.5±7.0ms、中高齢者群では100.9±7.4msであり、両群間に有意差は認められなかった。3)160m潜時は、若年成人群では161.7±5.3msであったのに対し中高齢者群では172.5±11.6msであり、中高齢者群で有意に(p<0.05)延長していた。3)100mー160m間潜時は10才年をとるごとに約4.16ms遅延する傾向が認められた。