体性感覚 P26

犬を用いた脊髄誘発磁界の測定

 安間基雄
 順天堂大学

背景:MRIをはじめとする脊髄の形態学的診断法は近年長足の進歩を遂げた。しかし未だに伝導路としての脊髄の機能を非侵襲的に診断する方法はないのが現状である。 従来から行われてきた脊髄の電位計測は術中モニタリングなどに有用であるが、椎弓切除を必要とするため適応はきわめて限定されてしまう。上行又は下降する脊髄の伝搬信号を非侵襲的に空間分解能を持って測定できれば、形態学的診断と補完することにより脊髄の機能診断に画期的進歩をもたらすと期待される。
目的:
犬を用いて脊髄誘発磁界を測定する。
対象と方法:静脈麻酔下に雑種仔犬の後脛骨神経を電気刺激し、坐骨神経を経て脊髄を上行する信号により発生する磁界を測定した。刺激強度は2.0mA、刺激持続時間は200msec500回加算平均した。
結果:
後脛骨神経から坐骨神経を上行して腰髄に入った信号は、刺激後約2.8msecで胸髄を通過した。また刺激から約10msecの潜時を経て、後シナプス電位によると思われる磁界が下位腰髄に発生したがこれは伝搬しなかった。脊髄を上行する伝搬性の磁界はいわゆるquadripoleを形成していた。
考察:
従来脊髄誘発磁界を測定したという報告はあるが、空間分布を明らかにして正確に上行性磁界を証明し得た報告はない。今回の結果から脊髄を上行する信号を磁界測定によって非侵襲的に測定しうることが証明された。今後椎間板ヘルニアや脊椎管狭窄症などの脊髄障害の機能的診断にきわめて有用だと考える。