研究テーマ


脳磁図と脳波を用いたヒト脳機能の非侵襲的研究

<研究の目的と概要>


脳磁図(Magnetencephalography,MEG)は,mm単位,msec単位の極めて高い空間及び時間分解能で非侵襲的に脳内の活動を知ることができる。脳内の電気的活動に伴って生じる生体磁気信号は地磁気の1億分の1程度と非常に微弱である為,高性能の磁気シールドルーム内において超伝導技術を駆使したSuperconducting QUantum Interference Device(SQUID)を用いて記録される。生理学研究所では左右の大脳半球を同時に記録できる74チャンネルの大型脳磁計が導入され,本邦におけるパイオニア的役割を果たしている。これら脳磁場研究は勿論,従来使われている脳波研究や頭部への磁気刺激による運動電位の研究と併用することによって,ヒト脳機能,特に感覚認知機構の解明と高次機能の生理学的解明を目指している。さらに,本研究室では昨年,世界最高の空間分解能を有する超小型高性能磁場計測装置(micro-SQUID)を導入した。これを用いることにより,動物(主にサル)での脳磁場計測,ヒトの末梢神経及び脊髄などでの磁場計測を行っていく予定である。

1. 体性感覚誘発脳磁場
(1) 上肢,下肢,顔面等への部位別刺激による第1次,第2次感覚野での反応の詳細な分析
(2) 受動運動によって誘発される感覚野の検討
(3) 電気刺激による誘発反応に対する運動や各種体性感覚刺激による干渉作用(gating)
(4) 痛覚認知機構の解明

2. 運動関連脳磁場
(1)自発運動前後の運動野及び感覚野での活動の詳細な検討

3. 視覚誘発脳磁場
(1) 格子縞反転視覚誘発脳磁場を用いた視野別刺激による視覚野の反応部位の検索
(2) 仮現運動に対する脳内反応部位の検索

4. 嗅覚誘発脳磁場
(1)バナナ臭やバラの花臭に対する脳内反応部位の検索

5. 言語活動に伴う脳磁場
(1)単語認知機構の解明
(2)発声に関与する脳内機構

6. 磁気刺激による運動電位
(1)Go/No-Go課題時における変化