富山大学・文部科学省特定領域研究「統合脳」共催
International Workshop on "Neural Bases of Learning, Emotion and Behaviour"

平成17年度 「中部・北陸地区ワークショップ」


 

日時
平成18年1月26日(木)
会場
富山市 市民プラザ

 

 

平成17年度 「中部・北陸地区ワークショップ」レポート

文部科学省特定領域研究「統合脳」の助成により、国際ワークショップ"Neural Bases of Learning, Emotion and Behaviour" が平成18年1月26日に富山市市民プラザにおいて84人の参加者を得て開催された。近年、いじめ、キレやすい子供や自殺者の増加、残虐性のある少年犯罪、情動障害およびそれに基づく行動障害など「人間らしさ」の喪失が社会問題化している。また、環境ホルモンや周産期障害に伴う脳の発達障害や小児の心理的発達障害(自閉症や学習障害児をはじめとする種々の精神神経疾患)、統合失調症患者の精神・行動の障害、さらには青年・老年期のストレス性神経症やうつ病の増加が社会問題化している。労働者健康状況調査によると、仕事や職業生活で「強い不安、悩み、ストレスがある」労働者の割合は62.8%に達する。現在では、このような「ストレス」を感じている人は90%近くに達するといわれている。これら情動や行動障害を伴う障害は、人間らしく日常生活を続ける上で重大な支障をきたし、本人にとっても非常に大きな苦痛を伴うだけでなく、深刻な社会問題にもなっている。ITなど技術革新の変遷が激しい現代社会では、今後さらに生活様式の急速な変化やそれに伴う環境変化が予想され、さらに先進諸国では社会の高齢化と相まってすでに精神障害が全疾病の40%を占めるようになってきている。このような現状から、今後の日本の神経科学研究においては、何らかの形で行動などシステムレベルの現象と結びつく研究が必要であると考えられる。本ワークショップは、以上の主旨により、学習・記憶や行動の神経機構に携わる若手研究者を育成する目的で開催され、北陸地区の若手研究者を中心に、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学・脳研究センターのアンソニー・フィリップス教授、フランス・パリ大学CNRS研究所のシドニー・ウイナー教授、および米国アイオワ大学ヘルスケアのオヤ・ヒロユキ研究員を迎えて、活発に発表・討論が行われた。発表内容は、遺伝子・分子レベルから、ラット、サル、ヒトの行動・神経生理学的研究まで広範囲にわたったが、行動や学習・記憶などシステムレベルにおいて接点があり、有意義で学際的な討論が行われた。発表後は、大多数の参加者が懇親会に参加して、アットホームな雰囲気の中でディスカッションを行い、これら活発な情報交換により2-3件の国際共同研究がまとまったと聞いている。また、修士・大学院生が参加者の約半数を占め、当テーマに対する若い研究者の関心の高さが感じられた。最後に、懇親会でご挨拶をして頂いた青木清先生、また開催にご尽力頂いた丹治順先生ならびに伊佐正先生に篤く御礼を申し上げます。

 

 


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