第35回生理研コンファレンス
Recent Advances in Cortical and Hippocampal Microcircuits
 大脳皮質・海馬の局所神経回路研究
(日本神経科学大会サテライトワークショップ)


 

日時
2006年7月24日(月)〜26日(水)
会場
自然科学研究機構・岡崎コンファレンスセンター

 

 

「第35回生理研コンファレンス Recent Advances in Cortical and Hippocampal Microcircuits
 大脳皮質・海馬の局所神経回路研究(日本神経科学大会サテライトワークショップ)」が、生理研と統合脳の共催にて、2006年7月24日?26日の3日間、愛知県岡崎市の岡崎コンファレンスセンターにおいて、124名(うち、外国人14名)の参加者を得て開催されました。
 大脳皮質の神経回路構築の解析は、現在、大きな飛躍の時を迎えていると言っても過言ではないと思います。今まで未知であった多くの事実が分子脳科学や多電極記録法等の新しい多様な手法で、今まさに、明らかになろうとしております。今回、最先端の情報を一流の科学誌に発信している欧米の第一線の大脳皮質研究者の諸先生方にお集まり頂き、最新の研究成果を発表して頂き、知識を深める事ができました。さらに、日本の大脳皮質神経回路研究の諸先生方にも、秀でた研究をご発表していただき、活発な質疑応答を交えた有意義な会合となったと考えています。シンポジウムでは、下記のとおり、外国人研究者8名、日本人研究者10名の計18名のお話を聞く事ができました。また、2日目夕方に行ったポスター発表にも海外からの参加者3名を含む31演題が集まり、日本の若き神経科学研究者や院生達も、第一線を走っておられる研究者と直接ディスカッションする機会を得た事で、大いに刺激を受けたと考えております。

発表演者
Edward M Callaway (Salk Inst., USA)
Takao K Hensch (Harvard Univ.,USA, 理化学研究所-BSI)
Sacha B Nelson (Brandeis Univ., USA)  Victoria M Puig (NIPS, Okazaki & MIT, USA)
Kathleen Rockland (理化学研究所-BSI)  Jackie Schiller (Technion, Israel)
Yitzhak Schiller (Technion, Israel)  Gabor Tamas (Univ. of Seged, Hungary)
池谷裕二(東京大学) 川口泰雄(生理学研究所)
木村文隆 (大阪大学) 窪田芳之(生理学研究所)
小松由紀夫(名古屋大学) 重本隆一(生理学研究所)
神野尚三(Oxford大学、英国) 福田孝一(九州大学)
藤田一郎(大阪大学) 吉村由美子(名古屋大学)

この会合をオーガナイズして感じた事は、大脳皮質の神経回路研究は、今や、個々の神経細胞のサブタイプを同定した上で解析していく事がまず求められている事です。その上で、回路の構成や個々の要素の形態的、生理的、機能的な解析が、質的量的両側面から行われている事が印象的でした。詳細で正確なデータに基づいて初めて評価の高い仕事として受け入れられる事が、現在の皮質神経回路研究の潮流と言えると考えます。その中で、今後の研究の方向性をかいま見せてくれた仕事をいくつかあげておきます。まず、ウイルスを使ってマーカー蛋白や、on-offスイッチを導入する仕事は、おそらく、これからの研究の1つの大きな柱となっていく事でしょう。また、geneの解析の仕事も今後の研究の飛躍を期待できる仕事と言えます。また、カルシウムの動向や、錐体細胞の基底樹状突起からのホールセル記録等を使って細胞の機能を見ようとする発表も、会場に興奮をもたらしておりました。また、より詳細に正確に解析する事で、これまでの常識とは異なる結果をだした仕事もいくつか見うけられました。このように正確な実験事実に基づいて、回路の新たな概念の提案は、皮質回路解析にとって、とても大事な知識となります。皮質回路解析をめぐる技術はどんどん発展しております。今後が多いに楽しみです。
 本会合は、参加していただいた諸先生方から、大変満足したとの声を多くいただいており、もう一人の世話人である名古屋大学の吉村由美子先生ともども苦労して開催した甲斐があったと考えております。ご参加いただいた諸氏との交流も深まり、多くの意味で非常に有意義であり、大変楽しい会合であった事をご報告致します。

(生理研 窪田)


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コンファレンスPHOTO

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