(所属領域)   領域・計画班員計画班員

(氏名)     伊佐 正深井 朋樹

(所属・職名)  自然科学研究機構・生理学研究所理化学研究所 脳科学総合研究センター

       認知行動発達機構研究部門・教授脳回路機能理論研究チーム チームリーダー

(電話)0564-55-7761048-467-6896

FAX0564-55-7766048-687-6899

(E-mail)  tisa@nips.ac.jptfukai@brain.riken.jp

URL

http://nct.brain.riken.jphttp://www.nips.ac.jp/hbfp/

(メッセージ)

学生時代に勉強した物理の教科書の中には、当然のことながら「脳」という言葉はどこにも見当たらず、「脳」が理論的な研究の対象になり得るなどとは考えてもいませんでした。それがある外国人研究者のセミナーに出席したことがきっかけとなり、脳に理論研究が存在することを知り、急速にその道へ進むことになってしまうとは。セミナーの内容自体はいいかげんなものだったように思いますが、私にとっては重要な出会いだったと言えるかもしれません。

 現在は主に大脳皮質や大脳基底核の神経回路のダイナミクスと、そこから生じる情報処理機能について、計算論的神経科学や物理学で培った理論的手法などを用いて研究を行っています。特に大脳皮質の局所神経回路の機能的構造や役割に関心をもち、理論と実験を組み合わせたアプローチも行っています。物理学的科学は、少なくともごく最近の理論先行の時代を除き、実験と理論が車の両輪となって発展して来ました。生物学的な科学研究の発展も同様の道筋を辿ることになると信じ、様々な実験結果から脳の仕組みに関するメッセージを読み取り、部分に関する知識を情報処理システムへと統合するような理論研究を目指しています。このような連携の和が、「統合脳」でさらに広がり、定着していくことを期待しています。以下、ご参考までに最近の論文から・・・

医学部の学生時代に出入りしていた研究室でやっていたことの先をもう少し知りたくなり、そのまま基礎研究の大学院に入学して20年が経過しました。遠大な目標があって脳研究を始めたわけではなく、その都度面白いと思うことを色々やってきたのですが、不思議なことに色々やってきた挙句、最近は20歳台後半の頃に「こういう研究ができたらよいな」と思っていたことに舞い戻って来たような感じです。勿論その頃イメージしていたことと比べると、方法論やアプローチの仕方はだいぶ違っていますが・・・

今は手指の器用な運動や眼球のサッケード運動を制御する神経回路についてその構造と機能を健常動物で解析するとともに損傷後の機能代償機構を調べることが主な研究のテーマです。方法はin vitroのスライス標本におけるパッチクランプ法を用いた実験から麻酔動物での電気生理、また覚醒マウスのサッケード運動から覚醒サルの行動実験と電気生理実験、さらにはサルを用いたPETによる脳機能イメージングなどを組み合わせています。また共同研究では機能代償過程での遺伝子発現なども調べています。

「統合脳」では色々な研究者と出会い、共同研究の輪が広がることを期待しています。

以下、ご参考までに最近の論文から・・・・

1)Takekawa T, Aoyagi T, Fukai T (2004) Influences of synaptic location on the synchronization of rhythmic bursting neurons. Network: Comput. Neural Syst. 15, 1-12.

2)Kitano K, Fukai T (2004) Temporal characteristics of the predictive synchronous firing modeled by spike-timing-dependent plasticity. Learning & Memory 11: 267-276.

3)Teramae J, Fukai T (2005). A cellular mechanism for graded persistent activity in a model neuron and its implications in working memory. Journal of Computational Neuroscience 18: 105-121.

(1) Isa T (2002) Intrinsic processing in the mammalian superior colliculus. Current Opinion in Neurobiology, 12:668-677.

(2) Sasaki S, Isa T, Pettersson L-G, Alstermark B, Naito K, Yoshimura K, Seki K, Ohki Y (2004) Dexterous finger movements in primate without monosynaptic corticomotoneuronal excitation. Journal of Neurophysiology, 92:3142-3147.

(3) Sakatani T, Isa T (2004) PC-based high-speed video-oculography for measuring rapid eye movements in mice. Neuroscience Research, 49:123-131.

(4) Watanabe M, Kobayashi Y, Inoue Y, Isa T (2005) Effects of local nicotinic activation of the superior colliculus on saccades in monkeys. Journal of Neurophysiology, 93: 519-534.

(研究室で有する実験技術・リソースとその公開の可能性)

大規模神経回路モデルのシミュレーション

慢性・覚醒サルでの眼球運動系の実験・神経活動記録、

大脳皮質運動野の微小電流刺激法・薬物局所注入、

麻酔下マウスでの脊髄上行・下行路の神経伝導計測

麻酔動物での電気生理実験、スライスパッチクランプ法、細胞内染色法、

マウスの眼球運動の高速度計測

(マウスの眼球運動系については担当者が1年間の留学で不在になりますが、他の技術について習得したい方を受け入れることは可能です。