|
(所属領域) 第三領域・計画班員 |
|
(氏名) 澁木 克栄 |
||
(所属・職名) 新潟大学・脳研究所 システム脳生理学分野・教授 |
||
(電話)025-227-0625 |
(FAX)025-227-0814 |
|
(E-mail) shibuki@bri.niigata-u.ac.jp |
(URL) http://brain.bri.niigata-u.ac.jp/%7Ephysio/ |
|
私は現在の研究室に移ってから13年目に入りますが、この間一貫して目指してきたことは、「齧歯類の大脳皮質を場とするシナプス可塑性の機能評価システム」を作り上げるということです。それまで私自身は小脳LTDの研究に関わってきたのですが、当時は(あるいは今も)齧歯類の可塑性と言えば、簡単にいえば海馬か小脳で、殆ど未開の荒野として大脳皮質が広がっていたという状態であったと思います。また当時から齧歯類を用いた脳研究における分子生物学の優位性は明らかで、その優位性の根本は次々に革新的な技術が分子生物学の研究の戦列において加わっていくという点にあり、それに比して、生理学は偉大な先人たちの業績を受け継ぐことで何とかやっているという点に学問としての弱みがあったかと思います。従って生理学の一学徒として、何とか先人たちの業績に頼らない新天地を大脳皮質において切り開きたいという願いがありました。このような野心は決して間違いではなかったと今でも思いますが、それでは現実に野心に見合うだけの成果を挙げ得たかというと、正直の所、冷や汗ものです。 5年ほど前から始めた脳機能イメージングの仕事は、しかし「齧歯類の大脳皮質を場とするシナプス可塑性の機能評価システム」を作り上げるという私の十年来の目標が現実のものとなるかも知れないという希望を抱かせてくれます。ミトコンドリアのフラビン蛋白に由来する緑色自家蛍光が活動依存的に変化するということは1962年に既に報告され、既知の事実であったわけですが、脳機能イメージングの原理としては殆ど忘却されていたといって良いかと思います。それが現代の優れた光学器械やCCDカメラのもとでは非常に有効な脳機能イメージングの方法と化すこと@、可塑性の研究に実際に使えることA、マウスの場合は特に経頭蓋的大脳皮質機能イメージングの方法として非常に有効であることB、等々が次々に判りました。さらにこの方法を用いて、特定の高さの音を聞かせながらマウスを飼育するとその音に対する聴覚野の応答が増強されること、古典的な単眼遮蔽による視覚野可塑性を解析できること、局所的な皮膚入力の除去に伴う体性感覚地図の改変が実際に解析可能であることなどが、この1−2年の間に判ってきました。多分解析可能な大脳皮質機能のカタログはまだまだ増え続けると思っています。@Shibuki et al, J Physiol (Lond) 549:
919-927, 2003. AMurakami et al, Eur
J Neurosci 19: 1352-1360, 2004. BShibuki et al, Endogenous flavoprotein fluorescence imaging
of neural activities by local changes in energy metabolism. In
Handbook of Neurochemistry & Molecular Neurobiology. Vol. 5, Neural
Energy Utilization (In press). |
||
(共同研究の可能性) 我々の研究の真価は適当な遺伝子改変マウスに応用して初めて発揮されるはずです。我々自身はむしろ解析可能な大脳皮質機能カタログの充実に専念し、解析すべき遺伝子改変マウスを有する他の研究室との共同研究を「統合脳」の場を借りて広く求めていきたいと願っています。 |