(所属領域)   第三領域・公募班員

(氏名)     田村 宏治          

(所属・職名) 東北大学・大学院生命科学研究科

助教授    

(電話)022-795-3489

FAX  022-795-3489

(E-mail)              

tam@biology.tohoku.ac.jp

URL

http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/ideken/index.html

(メッセージ)

7年ほども前アメリカに留学していた時に、左右性を決める転写因子Pitx2に出会い、もともと脊椎動物の形態形成を興味の中心に添えていたこともあり、からだの左右非対称性がどのようにしてできてくるかに興味を持ち始めました。帰国後、専門である四肢の発生と再生の研究を進める傍ら、左右軸形成を(自分なりに)調べられる実験系を模索しておりました。そんな中で出会ったのが異体類(ヒラメ・カレイの仲間)の視神経交差でした。

ご存知のように、ヒラメは左を向きカレイは右を向きます。これは、例えばヒラメでは幼生から成魚への変態過程で右眼球が正中を越えて左側に移動することによって生じます。カレイでは逆の動きになります。このとき正中で交差している視神経軸索は、交差状態によっては眼球の移動に伴って(すでに脳と連結しているので)ちょうど電気コードがねじれるように動くことになります。ところが面白いことに、ヒラメとカレイでは視神経交差の状態が常に真逆になっていて、ヒラメでは全ての個体で右眼球由来の視神経軸索束が体の背側を通り、カレイでは左眼球由来の視神経軸索束が体の背側を通っています(上の写真はカレイの視神経交差)。これにより、それぞれの種で眼球が移動するときに、常に視神経軸索のねじれが生じないようになっているわけです。

 この現象に目をつけ、果たして視交差が形成されるときにいかなるメカニズムで視神経軸索経路の左右非対称性が生じるのか、を少しずつ調べております。ただし、いかんせん神経発生はずぶの素人で苦労することが多く、本研究班では多くの先生方の最先端の研究をたくさん勉強し吸収して、自分の研究に活かしていきたいと考えています。

Ryan, A. K. *, Blumberg, B. *, Rodriguez-Esteban, C. *, Yonei-Tamura, S. *, et al. (1998). Pitx2 determines left-right asymmetry of internal organs in vertebrates. Nature 394, 545-552.

Tamura, K.*, Tsukui, T.*, Capdevila, J.*, et al. (1999). Multiple left-right asymmetry defects in Shh-/- mutant mice unveil a convergence of the Shh and Retinoic Acid pathways in the control of Lefty-1. Proc. Natl. Acad. Sci. 96, 11376-11381.

田村宏治 (2002). 左右軸の設定−左右非対称性はいかにして生まれるか− バイオサイエンスの新世紀 第10巻 (共立出版), 63-75.

(研究室で有する実験技術・リソースとその公開の可能性)

特段の技術は持ち合わせておりませんが、さまざまな実験系としての必要上、マウス胚、ニワトリ胚、トカゲ胚、カエル胚、ゼブラフィッシュ胚、ヒラメ胚、カレイ胚、サメ胚、エイ胚を有し、それぞれへの微細実験技術を得意としています。