(所属領域)   領域・計画公募班員

(氏名)   伊佐 正飯野 雄一

(所属・職名) 自然科学研究機構東京大学・生理学研究所

       認知行動発達機構研究部門遺伝子実験施設教授

(電話)056403-555841-77613034

FAX05643-55841-77663037

(E-mail)  

tisa@nips.ac.jpiino@gen.s.u-tokyo.ac.jp

URL

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/mgrl/IINO_lab/http://www.nips.ac.jp/hbfp/

(メッセージ)

私は東京大学理学部生物化学科に育ちました学部、大学院で酵母の遺伝学用いた研究を行い、新たに分離したひとつの突然変異体をきっかけに、全く未開拓の分子パスウェイが明らかにされるプロセスを体験しました。その後一念発起して神経科学の分野に飛び込み、ポスドクとしてコロンビア大学のEric Kandel教授の門を潜りました(もう随分前のことになりますが)Ericの研究室にいた時にはアメフラシの系で感覚神経をターゲットとした遺伝子クローニングを行いました。アメフラシは優れた神経生理学分子生物学の材料でが、一方、遺伝学の醍醐味忘れられず、遺伝学のアプローチを用いて神経機能を解明したいと考えました。そこで帰国後、線虫C. elegans材料として扱い始め、現在に至っています

 現在、化学走性行動を指標として、感覚受容や行動可塑性のメカニズムを研究しております。「まるごと」の動物の行動に常に向き合いながら、突然変異体や遺伝子改変動物を用いることにより、神経系で働く分子の作用を解明する過程面白みを感じています。線虫のわずか302の神経細胞はすべて同定されておりファインな解析が可能であることも魅力のひとつです。これまでの研究で、感覚順応や行動可塑性に関わるシグナル経路として、Ras-MAPK経路インスリン・PI3キナーゼ経路神経回路上での働き明らかにしました。また、GqGoの拮抗的な作用による制御機構明らかにすることができました。医学部の学生時代に出入りしていた研究室でやっていたことの先をもう少し知りたくなり、そのまま基礎研究の大学院に入学して20年が経過しました。遠大な目標があって脳研究を始めたわけではなく、その都度面白いと思うことを色々やってきたのですが、不思議なことに色々やってきた挙句、最近は20歳台後半の頃に「こういう研究ができたらよいな」と思っていたことに舞い戻って来たような感じです。勿論その頃イメージしていたことと比べると、方法論やアプローチの仕方はだいぶ違っていますが・・・

今は手指の器用な運動や眼球のサッケード運動を制御する神経回路についてその構造と機能を健常動物で解析するとともに損傷後の機能代償機構を調べることが主な研究のテーマです。方法はin vitroのスライス標本におけるパッチクランプ法を用いた実験から麻酔動物での電気生理、また覚醒マウスのサッケード運動から覚醒サルの行動実験と電気生理実験、さらにはサルを用いたPETによる脳機能イメージングなどを組み合わせています。また共同研究では機能代償過程での遺伝子発現なども調べています。

線虫と哺乳類の神経相同な分子が使われている例は多くあります。「統合脳」では他の班員の先生方と協力して色々な研究者と出会い、共同研究の輪が広がることを期待しています。種を超えた普遍的な分子メカニズムの解明に貢献できることを期待しております現在は特にマウス、ラットの脳におけるインスリンの働きに興味があります。

以下、最近の論文より

T. Hirotsu, S. Saeki, M. Yamamoto and Y. Iino "The Ras-MAPK pathway is important for olfaction in C. elegans" Nature, 404, 289-293 (2000)以下、ご参考までに最近の論文から・・・・

H. Kunitomo, H. Uesugi, Y. Kohara and Y. Iino "Identification of ciliated sensory neuron-expressed genes in Caenorhabditis elegans using targeted pull-down of poly(A) tails" Genome Biol 6(2): R17 (2005)

T. Hirotsu and Y. Iino "Neural circuit-dependent odor adaptation in C. elegans is regulated by the Ras-MAPK pathway" Genes Cells 10(6): 517-530 (2005)(1) Isa T (2002) Intrinsic processing in the mammalian superior colliculus. Current Opinion in Neurobiology, 12:668-677.

(2) Sasaki S, Isa T, Pettersson L-G, Alstermark B, Naito K, Yoshimura K, Seki K, Ohki Y (2004) Dexterous finger movements in primate without monosynaptic corticomotoneuronal excitation. Journal of Neurophysiology, 92:3142-3147.

(3) Sakatani T, Isa T (2004) PC-based high-speed video-oculography for measuring rapid eye movements in mice. Neuroscience Research, 49:123-131.

(4) Watanabe M, Kobayashi Y, Inoue Y, Isa T (2005) Effects of local nicotinic activation of the superior colliculus on saccades in monkeys. Journal of Neurophysiology, 93: 519-534.

(研究室で有する実験技術・リソースとその公開の可能性)

慢性・覚醒サルでの眼球運動系の実験・神経活動記録、本研究室は線虫C. elegansを専ら取り扱っておりますので線虫関連の技術とリソース(プロモーターコレクション等)を有しますヒトや

哺乳類等生物で扱っておでの遺伝子の分子機能が不明な場合、線虫にホモログがありましたらぜひお声をお掛け下さい。ノックアウト線虫を作成して発生あるいは行動の異常が見られたらこっちのものです。機能解明のお手伝いができるかもしれません。大脳皮質運動野の微小電流刺激法・薬物局所注入、

麻酔下マウスでの脊髄上行・下行路の神経伝導計測

麻酔動物での電気生理実験、スライスパッチクランプ法、細胞内染色法、

マウスの眼球運動の高速度計測

(マウスの眼球運動系については担当者が1年間の留学で不在になりますが、他の技術について習得したい方を受け入れることは可能です。