(所属領域)第五領域・計画班員

(氏名)   柳澤 勝彦

(所属・職名)国立長寿医療センター・研究所

       副所長

(電話)0562-44-6594

FAX0562-44-6594

(E-mail) katuhiko@nils.go.jp

URLhttp://www.nils.go.jp

(メッセージ)

アルツハイマー病の発症機構を分子レベルで解明し、治療薬開発に展開したいと考えています。アルツハイマー病研究のなかで重要な課題の一つは、アミロイドb蛋白(Ab)重合機構の解明です。私達は、今から10年余り前、アルツハイマー病の初期病変を示す脳に選択的に、GM1ガングリオシドに結合したAbGAb)が形成されていることを見出しました(Yanagisawa et al., Nat Med 1:1062-1066, 1995)。 GAbは大脳の膜画分に多く回収され、分離後、大きな凝集塊を形成する傾向を示しました。また、GAbは合成Ab断片を抗原として作製した抗体により認識されない場合が多く観察されました。このような特性から「AbGM1に結合することで構造変化を獲得し、その結果、seedとなって可溶性Abの重合を促進する」のではないかと考え、以来、今日までこの仮説の検証を進めています。幸い、8年がかりの手探りの作業でGAbの特異構造を認識する抗体を作製することに成功し、昨年、脳内におけるGAb形成をアルツハイマー病脳と老齢サル脳において確認することができました(Hayashi et al., J Neurosci 24:4894-4902, 2004)。脳内のAb重合におけるガングリオシドの役割については、最近、遺伝的変異型Abを対象に、これまでとは異なる視点からも検討を加えています。遺伝的変異型Abはアミノ酸置換の如何により脳内における重合・蓄積の態度が異なります。ある型のAbは脳実質に選択的に、ある型のAbは脳血管壁に選択的に蓄積し、前者はアルツハイマー病を、後者は血管障害(アミロイド・アンギオパチー)を引き起こします。私達は、最近、これらの脳領域特異的なAb蓄積には局所に発現されるガングリオシドの分子種とその存在様式が重要な役割を果たしていることを示しました(Yamamoto et al., J Neurochem 90: 62-69, 2004; Yamamoto et al., FEBS Lett 579: 2185-2190, 2005)。「統合脳-病態脳」のなかで、多くの班員の方々に接し、また議論を重ねながら、老化やapolipoprotein E4といったアルツハイマー病発症危険因子が、脳領域特異的に神経細胞膜微小環境を変化させ、その結果、GAbの形成が促進されている可能性を探りたいと考えています。さらに一方では、seedを標的とする治療薬開発について、様々な可能性を精力的に検討したいと考えています。

(研究室で有する実験技術・リソースとその公開の可能性)

Abやその前駆体蛋白であるAPPに関する生化学的、分子細胞生物学的解析技術

神経細胞膜脂質化学に関する解析技術