(所属領域)  第五領域・公募班員

(氏名)  岩田修永 (いわた のぶひさ)

(所属・職名)理化学研究所・脳科学総合研究センタ−

     神経蛋白制御研究チ−ム・副チームリーダー

(電話)048-462-1111

FAX048-467-9716

(E-mail)  iwatan@brain.riken.jp

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(メッセージ)

縁がありまして7年ほど前から理研に設立されました脳センターに異動し、それまで13年間従事していました薬物代謝研究から、神経科学の領域に方向転換しました。異動後は、アルツハイマー病脳に蓄積して発症の引き金となるアミロイドβペプチド(Aβ)の脳内分解システムについて解析し、この分解過程の律速段階に関与する主要酵素ネプリライシンの同定を行いました。このように、肝臓の薬物代謝酵素によって化学物質がどのように代謝されるかの研究から、脳内のプロテアーゼによって神経ペプチドまたは蛋白質がどのように代謝されるかの研究に変りました。特に、神経変性疾患における蛋白質の異常蓄積や神経細胞死へのプロテアーゼの関わり合いに興味をもって研究を進めています。

Aβの蓄積は、実は正常人の脳でも観察され、全てのヒトが40〜80歳の間から蓄積を開始して、そのレベルは加齢と共に上昇することが知られています。このAβの蓄積速度の違いが、アルツハイマー病の発症を規定すると考えられます。年をとればとる程アルツハイマー病になる危険性が増すわけで、実際発症率は加齢と共に増加します。このように、我々は皆アルツハイマー病になる危険因子を共有していることになります.加齢依存的脳内のAβ蓄積は、アルツハイマー病が脳老化の終末像であることを示唆します。アルツハイマー病を克服することができれば、将来的に脳の老化自体を制御することも可能になるかもしれません。

現在、ネプリライシンの活性を増強して脳内Aβレベルを低下させる新たなアルツハイマー病の治療方法を模索しています。また、脳内ネプリライシン活性の低下に起因するAβ上昇によって神経細胞の機能低下が起こることを認め、このことが部分的にも孤発性アルツハイマー病の病因を説明するのではないかと、その可能性について追求しています。一方、最近では神経細胞死に関わる蛋白質分解酵素の機能的役割を解明するため、プロテオーム技術を用いた研究に取り組んでいます。

「統合脳」では是非ともよろしくお願い申し上げます。

 

(研究室で有する実験技術・リソースとその公開の可能性)

麻酔動物(マウス)での電気生理実験 (貫通線維束/歯状回顆粒細胞およびSchaffer側枝/海馬CA1錐体細胞における長期増強の測定など)、マウス専用マイクロ核磁気共鳴画像装置を用いたin vivoアミロイドイメージング画像ならびにT1およびT2共鳴画像の取得などがありますが、現在結構立て込んでおります。