(所属領域)   第一領域病態脳計画公募班員 /. 支援班

(氏名)   伊佐 正宮川 剛

(所属・職名) 自然科学研究機構京都大学大学院生理学研究所医学研究科

       先端領域融合医学研究機構認知行動発達機構研究部門教授

(電話)0564075-55753-77619326

FAX0564075-55753-77669281

(E-mail)  tismiyakawaa@nips.ac.jphmro.med.kyoto-u.ac.jp

URL

http://www.nips.ac.jp/hbfp/behav.hmro.med.kyoto-u.ac.jp

(メッセージ)

 私は大学院進学時より今日まで、遺伝子改変マウスの行動解析を出発点として、脳で発現する遺伝子の機能を調べてきております。22,000程度あると言われる遺伝子の半分以上は脳で発現しており、脳神経科学・精神医学研究においても、次々と作成される遺伝子改変マウスの活用により研究が加速されると考えられ、欧米では脳・行動研究においてもマウスを用いた研究の大規模化の動きがあります。日本でも、ポストゲノムシークエンスの文脈をふまえ、遺伝子改変マウスの網羅的表現型解析を起点としたラージスケールの脳神経科学・精神医学の研究を戦略的に行っていく必要があるのではないでしょうか

 「ラージスケール」といいましても、ゲノムプロジェクトと大きく異なる点は、脳神経科学における表現型解析は、多種多様特殊な研究手法を駆使して行う必要があるということです。つまり一カ所の「工場」だけでできるものではなく、多くの異なる分野の特殊技術を持つ研究者のコンソーシアム的な連携が必要になるでしょう。のようなラージスケールのプロジェクトは個々のスモールスケールの研究を圧迫するものでは決してなく、むしろ小さな研究室でも、大規模データベースにアクセスが可能になり様々なカッティングエッジテクノロジーやリソース活用することができることになりますので、チャンスは大きく広がることになるのではないかと思います。これまでにたいへん高名な先生方から院生・学部生まで、多くの方々のご賛同を得ておりますものの、充分な予算の裏付けがありませんとコアラボやコアファシリティーを設立・運営することは困難で分子脳科学の班長をされています三品先生の呼びかけにより結成されましたマウスリエゾンというワークグループでは、そのあたりを何とかするべく議論を行っています。

 とはいっても、まずは既にあるリソースでできることをしていく必要があります。私どもの研究室では、幸い統合脳の支援班からの補助も受けることができましたので、遺伝子改変マウスの網羅的行動解析についての共同研究の提案を歓迎しています。また、近いうちに個々のマウスの行動の生データと「網羅的行動データ付き脳のリソース」の公開を行えればと考えています。ぜひ、このような考え・計画についての班員の皆様のご意見・ご要望をいただければと思います。

参考:宮川 剛, 「脳神経科学のlarge-scale化とマウスを用いた精神疾患の研究」, 実験医学 (羊土社, 2005), pp. 1152-1158.医学部の学生時代に出入りしていた研究室でやっていたことの先をもう少し知りたくなり、そのまま基礎研究の大学院に入学して20年が経過しました。遠大な目標があって脳研究を始めたわけではなく、その都度面白いと思うことを色々やってきたのですが、不思議なことに色々やってきた挙句、最近は20歳台後半の頃に「こういう研究ができたらよいな」と思っていたことに舞い戻って来たような感じです。勿論その頃イメージしていたことと比べると、方法論やアプローチの仕方はだいぶ違っていますが・・・

今は手指の器用な運動や眼球のサッケード運動を制御する神経回路についてその構造と機能を健常動物で解析するとともに損傷後の機能代償機構を調べることが主な研究のテーマです。方法はin vitroのスライス標本におけるパッチクランプ法を用いた実験から麻酔動物での電気生理、また覚醒マウスのサッケード運動から覚醒サルの行動実験と電気生理実験、さらにはサルを用いたPETによる脳機能イメージングなどを組み合わせています。また共同研究では機能代償過程での遺伝子発現なども調べています。

「統合脳」では色々な研究者と出会い、共同研究の輪が広がることを期待しています。

以下、ご参考までに最近の論文から・・・・

(1) Isa T (2002) Intrinsic processing in the mammalian superior colliculus. Current Opinion in Neurobiology, 12:668-677.

(2) Sasaki S, Isa T, Pettersson L-G, Alstermark B, Naito K, Yoshimura K, Seki K, Ohki Y (2004) Dexterous finger movements in primate without monosynaptic corticomotoneuronal excitation. Journal of Neurophysiology, 92:3142-3147.

(3) Sakatani T, Isa T (2004) PC-based high-speed video-oculography for measuring rapid eye movements in mice. Neuroscience Research, 49:123-131.

(4) Watanabe M, Kobayashi Y, Inoue Y, Isa T (2005) Effects of local nicotinic activation of the superior colliculus on saccades in monkeys. Journal of Neurophysiology, 93: 519-534.

(研究室で有する実験技術・リソースとその公開の可能性)

慢性・覚醒サルでの眼球運動系の実験・神経活動記録、

大脳皮質運動野の微小電流刺激法・薬物局所注入、

麻酔下マウスでの脊髄上行・下行路の神経伝導計測

麻酔動物での電気生理実験、スライスパッチクランプ法、細胞内染色法、

マウスの眼球運動の高速度計測遺伝子改変マウスの網羅的行動テストバッテリーを用いて、現在、国内の30以上の研究室との共同研究が進行中です。現在は人手・予算問題から、マウスだけでなく実験をしていただける方も送り込んでいただき、こちらが実験の仕方を指導する、というかたちで共同研究を進めております。

今のところ共同研究の依頼はすべて引き受けてきておりますので、ご遠慮なくお問い合わせ下さい。ただ、飼育室のキャパシティーが限られておりますので、ご予約は早めにお願いいたします網羅的行動テストバッテリーの詳細につきましてはホームページに掲載しております。

(マウスの眼球運動系については担当者が1年間の留学で不在になりますが、他の技術について習得したい方を受け入れることは可能です。