(メッセージ)
医学部を卒業して5年間ほど神経内科の臨床トレーニングを受けました。その後大学院に進んで研究の手ほどきを受け、糖鎖関連の研究(糖転移酵素遺伝子のクローニングなど)を行ないました。現在興味をもっている神経幹細胞の研究を始めたのは、1999年にトロント大学に留学してからですが、この間の(神経)幹細胞研究や再生医学研究の勢いや熱気には目を見張るばかりです。留学中は主に神経幹細胞の発生や胎生期における未分化性維持の機構に注目して研究を進めましたが、帰国後はそれらに加えて成体脳で神経幹細胞の維持のメカニズムや、脳の高次機能に対する神経幹細胞/神経新生の役割なども研究していきたいと思います。これまでの経験を生かして、精神神経疾患の脳での神経幹細胞の動態や、障害を受けた脳の修復を目指した内在性神経幹細胞の活性化にも研究テーマを拡げていきたいと考えています。学生時代に出入りしていた研究室でやっていたことの先をもう少し知りたくなり、そのまま基礎研究の大学院に入学して20年が経過しました。遠大な目標があって脳研究を始めたわけではなく、その都度面白いと思うことを色々やってきたのですが、不思議なことに色々やってきた挙句、最近は20歳台後半の頃に「こういう研究ができたらよいな」と思っていたことに舞い戻って来たような感じです。勿論その頃イメージしていたことと比べると、方法論やアプローチの仕方はだいぶ違っていますが・・・
今は手指の器用な運動や眼球のサッケード運動を制御する神経回路について、その構造と機能を健常動物で解析するとともに損傷後の機能代償機構を調べることが主な研究のテーマです。方法はin vitroのスライス標本におけるパッチクランプ法を用いた実験から麻酔動物での電気生理、また覚醒マウスのサッケード運動から覚醒サルの行動実験と電気生理実験、さらにはサルを用いたPETによる脳機能イメージングなどを組み合わせています。また共同研究では機能代償過程での遺伝子発現なども調べています。
「統合脳」で様々な分野の先生方のお話を聞き、新しいテクニックを知ることができると楽しみにしておりますし、は色々な研究者と出会いさらに、共同研究に発展させられれば望外の喜びです。よろしくお願い致します。
の輪が広がることを期待しています。
以下、ご参考までに最近の論文から・・・・
(1) Isa T (2002) Intrinsic processing in the
mammalian superior colliculus. Current
Opinion in Neurobiology, 12:668-677.
(2) Sasaki S, Isa T, Pettersson L-G, Alstermark
B, Naito K, Yoshimura K, Seki K, Ohki Y (2004) Dexterous finger movements in
primate without monosynaptic corticomotoneuronal excitation. Journal of Neurophysiology,
92:3142-3147.
(3) Sakatani T, Isa T (2004) PC-based high-speed
video-oculography for measuring rapid eye movements in mice. Neuroscience Research, 49:123-131.
(4) Watanabe M, Kobayashi Y, Inoue Y, Isa T
(2005) Effects of local nicotinic activation of the superior colliculus on
saccades in monkeys. Journal of
Neurophysiology, 93: 519-534.
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