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統合脳支援班課題
「簡便に使える Single-cell microarray analysis 法の開発と普及」
による技術講習会について

生体の全ての組織は、多種多様な細胞種の集団により構成されています。中でも哺乳類の中枢神経系組織は、他に類を見ないほどに多様な細胞により構成され、神経回路が形成され、神経活動が営まれています。それ故、神経回路の成り立ちや機能を調べるためには、個々の単一中枢神経系細胞(主に神経細胞)の発現遺伝子プロファイルを調べることは非常に重要と思われます。
そのような必要性から、これまでにも単一細胞より得たcDNAをPCR増幅して発現遺伝子プロファイリングを行った例は、幾つか報告されています。しかしそれらの報告にある方法のプロセスは難しく、分子生物学者でも再現性を持って繰り返し実施できず、他分野の研究者であれば分子生物学者の助けなくして利用できる技術ではありませんでした。そこで我々は、他分野の研究者が技術修練無く短期間で再現性を持って単一細胞発現遺伝子プロファイリングを行えるようにする方法を確立すべく、研究を重ねてきました。
現在までに、タカラ・クローンテック社のSuper Smart cDNA PCR amplification kit とAffymetrix 社のOne cycle RNA labeling kitを組み合わせて、単一細胞に含まれる mRNA を 2-3枚のmicroarray にハイブリダイズするのに十分な量のbiotin標識の入ったcRNAまで増幅することに成功しました。次に増幅の再現性、信頼度を確かめるために、E18-P0のGAD67-GFPノックインマウスの脳室下帯よりGFP陽性細胞をセルソーターにより分離して得た1mgのtotalRNAから通常の方法でarray analysisを行なった場合と、同totalRNAを10万倍希釈してからSuper Smart cDNA PCR amplification kit とAffymetrix 社のOne cycle RNA labeling kitによる増幅を行なってarray analysisした場合を比較しました。その結果、希釈して増幅した場合は、プレゼントコールが56%まで減少してしまうことが分かりました。しかしプレゼントコールが示された遺伝子の発現をsingle-cell RT-PCRや免疫組織化学法で調べてみたところ、これまでは全て検出できたという経験から、false negativeは頻発するがfalse positiveはほとんど起きないことが示唆されました。 false negativeは頻発してもfalse positiveは起きないことは、実験方法として確立する上で非常に重要です。

方法の概略はホームページに記載しました。
http://srv02.medic.kumamoto-u.ac.jp/dept/morneuro/r_micro.html

このホームページにある方法が、自分たちの研究に適しているかどうかを十分に検討して、適すると判断された場合に参加申し込みをされるようにお願いします。

講習会

 
日   時

2010年1月20日(水)―22日(金)の2泊3日

初日は11時に始まり、最終日は16時には終了し、大阪、名古屋、東京からの始発で到着して、大阪、名古屋、東京への最終飛行便に間に合うように計画しております。その間昼夜兼行で実験を進めますので、その点もご了承ください。
場   所 熊本大学遺伝子実験施設及び大学院医学薬学研究部脳回路構造学実験室
募集定員 5名(5研究室)
宿   泊 近隣のビジネスホテルを各自で確保してください。
費   用 講習費は無料ですが、交通費宿泊費は自己負担となります。
講   師 渡辺啓介 脳回路構造学助教
武 勝昔 中国第4軍医大学教授


文責: 熊本大学大学院医学薬学研究部脳回路構造学・教授
玉巻伸章

申し込み・申請書(PDF120KB)