【課題9:High Titerレトロウイルスの調製とその応用】

 神経系の機能の解明を志す研究者の多くは、個体レベルでの脳機能のメカニズムを解明したいと考えている。技術進歩によりトランスジェニックマウスやターゲティングマウスの作製が一般化されてきたが、いまだ少々大がかりの感は歪めない。このような現状で組み替えレトロウイルスは動物個体に外来性遺伝子をストレス無く恒久的に導入できる優れた方法である。唯一の問題点は感染効率の低さであった。近年、我々はレトロウイルス産生細胞とウイルス濃縮に工夫し従来の1万倍のウイルス感染効率を実現した。また、妊娠マウスの子宮外からマウス胎仔脳に組み替えレトロウイルスを注入する技術を開発し、これによって成体では非分裂細胞である神経細胞にも任意の外来性遺伝子を取り込ませることが可能になった。
 本トレーニングコースでは我々が樹立した高力価レトロウイルス産生細胞からレトロウイルスを回収しこれを遠心濃縮によって10の12乗pfu(プラーク・フォーミング・ユニット)/mlにまで濃縮する方法を習得していただく。さらに、マウス胎仔脳へのレトロウイルスの導入の実際を体験する。