1.「生物試料の位相差低温電子顕微鏡観察」
生物電子顕微鏡の新しい流れは、氷包埋無染色試料の“生”観察である。蛋白質やオルガラ,リボソーム,ウィルスなどの単粒子解析(SPA)とバクテリアや、組織凍結試料の低温トモグラフィーが、2大潮流として米国で急速に立ち上がりつつある。この流れに取り残されつつある日本だが、位相差法をベースにすれば、その高いコントラスト性能故に十分互角の戦いができるだろう。本コースは、特にこの新しい流れを位相差法を軸に紹介したい。凍結試料調整,位相差電顕の扱い,SPAについてトレーニングする。
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2.「免疫電子顕微鏡法」
生体のはたらきを知るためには、まずその構造を知り、機能分子がその構造の中でいかなる分布、局在、動態を示すかを知ることが、基本的に重要である。電子顕微鏡レベルで分子の局在を可視化するためには、特定の分子を選択的に、且つできるだけ高解像度で標識することが必要となる。免疫電子顕微鏡法(免疫電顕法)とは、超微形態レベルで抗原分子の局在を特異抗体を用いて観察する免疫組織化学法のことである。本コースでは神経科学において高解像度で抗原分子の局在を観察するために広く使われているPre-embedding法やPost-embedding法などの金標識抗体法に加え生理学研究所脳形態解析研究部門で最近行っている凍結割断レプリカ免疫標識法を紹介する。具体例として、神経伝達物質受容体の局在解析をとりあげるが、受講者が希望すれば任意の分子について実験を行うことも可能である。
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3.「in situ hybridization法を用いた二重染色法」
目的
組織内の細胞をさまざまな方法で二重標識することにより、細胞タイプの同定やその動的状態を明らかにすることができます。本コースでは、その一例とし
て胎仔マウス脳や脊髄の組織切片をin situ hybridization (ISH)と免疫組織化学染色により二重染色することにより、細胞タイプとその増殖能を可視化し形態学的に解析します。
ISHでは組織をプロテアーゼ処理し、さらに50℃以上の温度で1晩反応させるため、その後の免疫組織化学染色は困難と考えている人も多いと思いま
す。しかし、抗原や抗体によっては、ISHの後でも組織化学染色で非常に強いシグナルを得られるものがあり、私たちの経験をふまえて、その種類や手順を
紹介します。
コース主催者による事前準備
妊娠マウスにブロモデオキシウリジン(BrdU)を投与し、1−2時間の後、胎仔を摘出し固定します。そしてこれをクリオスタットにより切片にしてお
きます。In situ hybridization用のプローブも準備しておきます。プローブは、オリゴデンドロサイト前駆細胞に発現しているbHLH型転写因子Olig1に
対するジゴキシゲニン(DIG)標識されたcRNAプローブを使います。
実習と講義
コース参加者は、主催者の準備した切片とプローブを用いてin situ hybridizationの実習を行います。第1日目はHybridizationまでの組織の処理とhybridization、第2日目は
stringency washingとアルカリフォスファターゼ(AP)標識抗DIG抗体との反応まで、3日目はAPを発色させin
situ hybridizationを終了します。その後、2番目の反応である免疫組織化学染色のための処理を始め、一次抗体である抗BrdU抗体との反応まで
を行います。最終日はABC法によりBrdUを取り込んだ細胞を可視化し、Olig1と同時に陽性を示す細胞の割合を解析します。
講義では、ISHの手順、組織切片の作製、プローブ作製の手順について解説します。また、実習で行う以外の組織の二重標識の方法に関して、蛍光抗体
法、double ISH、X-gal反応のあとの免疫染色とISHについても紹介します。組織学的解析をあまり行った事のない大学院生にも理解できるような実習にしたい
と考えています。
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4.「遺伝子改変動物作製(マウス)」
マウスでは、生殖細胞への分化能を持ったES細胞レベルで、標的遺伝子組み換えを施し、その組み換えES細胞を受精卵へインジェクションすることで、標的遺伝子の配列を自由自在に改変させた個体を作り出すことができる。分子生物学的手法と発生工学的手法を駆使して作製したこれらの遺伝子改変動物(ノックアウトマウス)は、ヒト疾患の発症メカニズムや脳神経機能の分子メカニズムを解明するのに大いに役立っている。本コースでは、マウスにおける、1)
ES細胞培養の基礎、2) 実験動物の取り扱い、3) 受精卵の採取(過剰排卵誘起、卵管・子宮灌流)、4) 受精卵の顕微操作(8-cellインジェクション)、5)
胚移植(胚の子宮内移植)といった発生工学の基本技術について実習する。
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5.「in
vitro 発現系を用いたイオンチャネル 受容体の機能解析」
イオンチャネル・チャネル型受容体・代謝型受容体・新規電位センサー蛋白等の膜機能蛋白を、アフリカツメガエル卵母細胞、HEK293細胞等の
in vitro 発現系を用いて発現させ、その分子機能と細胞応答を、2本刺し膜電位固定法、パッチクランプ法、細胞内Ca2+イメージング法、FRET法に基づいた分子プローブによる
cAMP 測定法などにより解析する。データの解析法や実験の統合的な進め方についても議論を行う。二つの研究室(岡村研究室と久保研究室)に分かれて、少人数でのほぼマンツーマンの指導を行う。電気生理学の初心者、分子生物学の初心者も歓迎し、各自の希望に添ってできるだけ個別対応する。
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6.「2光子顕微鏡によるバイオイメージングの基礎と応用」
2光子顕微鏡は生体組織深部のin vivoイメージングや定量的な蛍光観察、刺激を可能とする新しい生理学的手法で多くの成果を上げていますが、それに触れる機会はまだ少なく、その正しい理解や応用は必ずしも容易ではありません。本コースでは、世界でトップクラスの性能を持つ2光子励起顕微鏡を用いて生体標本の観察を体験することで、光学顕微鏡の基礎を理解していただくとともに、細胞内カルシウムの定量的画像解析、分泌細胞の開口放出の定量化、ケイジド試薬の利用など、当研究室で日常的に行われている応用例に触れていただきます。2光子顕微鏡に親しみたい方、また、一般に蛍光in
vivoイメージング、カルシウム濃度測定、エクソサイトーシス、エンドサイトーシスの画像解析などに興味のある方が対象です。
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7.「パッチクランプ法」
パッチクランプ法による実際の電流記録と活動電位の関連を基礎から学ぶことができます。神経細胞の膜電位依存性Na及びKイオンチャネルの活動をパッチクランプ法で記録します。活動電位の発生機構を理解するために、Hodgkin-Huxleyの式のコンピュータシ
ミュレーションなどを活用します。こうした基本法を修得した後、希望者は以下のような応用技術を学ぶことができます。
1) リガンドセンサー、細胞容積センサーおよび膜伸展センサーとして機能する3種のチャネル分子の働きを観測します。リガンド作動性イオンチャネルを発現した細胞にパッチクランプ全細胞記録を行い、リガンド作動性イオンチャネル活性をモニターすることで、標的細胞からのリガンド放出をリアルタイムに観測できることを体験します。また、細胞容積増加や細胞膜伸展に反応して活性化するイオンチャネルを全細胞記録および単一チャネル記録を用いて観測し、細胞が如何に容積増加や膜伸展を検知するかを実際に体験します。
2) 細胞内情報伝達関連分子をintactに保ったまま、イオンチャネルなどの各種細胞センサー活動を観察できる穿孔パッチ法の技術/応用を修得します。具体的には、ニスタチン穿孔法を利用した受容体?イオンチャネルの細胞内クロストーク、およびグラミシジン法を利用した神経細胞本来のGABA応答や細胞内Cl-濃度調節機構を観察する技術/応用を習得します。また、標本として、任意の部位から神経細胞を急性単離する技術も修得します。
3) 非選択性陽イオンチャネルで高いCa2+透過性を有する温度感受性TRPチャネルの機能解析を学びます。具体的には、感覚神経細胞の初代培養法とHEK293細胞への温度感受性TRPチャネル遺伝子の導入法を修得します。そして、それらの細胞を用いて温度変化による電流活性化と細胞内Ca2+濃度の増加をそれぞれパッチクランプ法とCa2+-imaging法によって観察します。
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8-1.「スライスパッチクランプ法」
近年、パッチクランプ法は既製の機器を組み合わせて簡易に測定できるようになり、細胞の活動性を検出する方法として様々な分野に活用されている。その一方で、電気生理学的手法に馴染んだ事の無い人がパッチクランプの実験を始めることも多いと思う。本コースでは正立顕微鏡やマニュピュレーターを扱ったことのないパッチクランプ実験の初心者を対象に、脳スライス標本の作製における留意点、細胞の選び方、パッチクランプの仕方など、スライスパッチクランプ法の基本的技術を習得し、ホールセルパッチクランプが各自でできるようになることを目的とする。また、スライスパッチクランプ法の基本的理論を理解する。実習は囓歯類の大脳皮質、海馬、小脳などのスライス標本を用い、voltage-clamp
法、current-clamp 法で記録し神経細胞とシナプスの基本的性質を観察する。希望者はバイオサイチン染色法を行い、パッチした細胞の形態を観察する。
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8-2.「スライスパッチ応用コース(1)」
パッチクランプ法は様々な分野に取り入れられている現在において、周りに電気生理学の専門家のいない環境で、パッチクランプ実験に苦心されている方も多いと思う。本コースは、脳スライスや培養細胞などでパッチクランプ実験の経験がある人を対象に、スライスパッチクランプ法の電気生理的理論の理解を深め、正しい技術を習得し、中枢神経系のニューロンとシナプスの基本的性質を電気生理学的に正確に記録・解析できるようになることを目的とする。また、バイオサイチン注入による細胞形態染色法やブラインド・パッチ等の応用技術を紹介する他、現在直面している問題について実際的なトラブルシューティングを試みたい。
具体的内容
1) 大脳皮質の錐体細胞、線条体細胞、前脳基底核細胞からホールセル記録を行なう際に、内液中にバイオサイチンを含有させることによって、記録後にニューロンの形態学的解析を行なう。
2) 線条体ニューロンでは、発火パターン、膜特性によるニューロンサブタイプの同定を行なう。
3) ホールセル記録を行ない、記録ニューロン近傍に細胞外電気刺激を与えることにより興奮性および抑制性シナプス電流を誘発し、これらのシナプス電流の電位依存性、薬理学的特性等を解析する。
4) テトロドトキシン存在下に自発性微小シナプス電流を記録し、その頻度、振幅分布の解析を行なう。
スライスパッチクランプ実験を始めた人がまず直面する問題が、“良いスライス作成”である。スライサーのメンテナンス、溶液の問題等、状態の良いスライス作成法を常に心がけながら、上記の実験を進めたい。
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9-1.「大脳皮質ニューロンの解析 (大脳皮質スライスでのホールセル記録)」
大脳新皮質にある局所神経回路を調べるには、電気的結合特性や形態的シナプス構造をみていくことが不可欠である。その基本的技術を紹介する。
9-1) パッチクランプ実験の初心者を対象に、スライス標本の作製、細胞の選別、パッチクランプの仕方など、スライスパッチクランプ法の基本的技術を習得し、ホールセルパッチクランプが各自でできるようになることを目的とする。実習はラットの大脳皮質のスライス標本を用い、voltage-clamp
法、current-clamp 法で大脳皮質の様々な細胞の発火活動やシナプス 電流を記録する。希望者はバイオサイチン染色法を行い、パッチした細胞の形態を観察する。
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9-2.「大脳皮質ニューロンの解析 (大脳皮質の免疫電顕観察法)」
大脳新皮質にある局所神経回路を調べるには、電気的結合特性や形態的シナプス構造をみていくことが不可欠である。その基本的技術を紹介する。
9-2) 電子顕微鏡切片作成の経験がある人を対象とする。ラット大脳皮質の各種神経細胞を、免疫組織化学法を使って電子顕微鏡観察用に染色し観察する。また、中級者以上の受講者には、連続超薄切切片作製方法を紹介する。
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10-1.「生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(1)
(PICマイコンによる温度コントローラーとバスチェンバーの作製)」
本実習コースは、電気生理の実験手法の一つであるパッチクランプ実験をテーマに、電気生理実験に有用な灌流液の温度調節用の「温度コントローラ」と「アクリル製バスチェンバー」の作製を行います。
温度コントローラは、バスチェンバーの温度を一定に保持したいときに、バスに供給する灌流液やバス自体の溶液温度をモニターしながら、ヒーターをオン・オフするための回路で、これらはPICマイコンによって制御します。
バスチェンバーは、顕微鏡下で細胞を生かしたまま実験するときに、灌流液を3種類まで速やかに交換することができる機能を持ったチェンバーです。 上記の実践型の実習を通し,生理学実験に必要となる実験機器の製作技術の基本と応用力の養成を目的とします。
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10-2.「生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(2)
(C言語によるPICプログラミング)」
本コースは,種々の実験の制御や計測に応用可能なPIC(Peripheral Interface Controller)を取り上げ,PICを応用するためのハードウェアとソフトウェアの基礎を学びます。ハードウェア実習ではPIC本体の構成と機能ならびに周辺部品の概要を学び,「PICマイコン学習キット」の作製を行います。ソフトウェア実習では,C言語を利用したプログラミングの基礎を学習し,いくつかのPICの制御プログラムの作成を行います。作成したプログラムは,その都度PICライタにて書き込みを行い,先に作製した「PICマイコン学習キット」を使って動作確認を行います。
上記の実践型の実習を通し,生理学実験に必要となる実験機器の製作技術の基本と応用力の養成を目的とします。
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11.「摂食・飲水行動発現機構入門」
摂食・飲水行動は生命維持に関わる最も基本的な本能行動であり、生体内外の環境変化を中枢神経系においてモニターすることによって惹起される。本コースで は、これら本能行動の神経回路網を明らかにする研究法の一つとして、マウス視床下部・脳室内に微量の神経伝達物質、ホルモンを投与し、摂食・飲水行動の発現および自発運動量の変化を観察する。
特に本実習においては、1)マウス視床下部神経核・脳室内への微小カニューレの挿入、カニューレの頭蓋への固定技術、2)無麻酔・非拘束下において、固定した微小カニューレよりホルモン・神経ペプチドを投与する技術、3)マウスの摂食・飲水行動ならびに自発運動量を観察・定量化する基礎技術を学習する。また、マウスは実験者及び実験環境に慣れ難いため、行動実験においてはマウスへのストレスを最小限にするなどの注意が特に必要である。
そこで、マウスのハンドリング操作を含む、マウス個体を用いた実験法の基本的事項についても併せて学習する。
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12.「麻酔下動物での急性電気生理実験」
麻酔下の動物で神経回路を構成する細胞間の結合関係や神経回路の動的特性、また 個々のニューロンの細胞内電位や膜特性を計測する実験は1950年代から微小電極
法の開発に伴って急速に進歩し、1960−70年代までは神経生理学における主要 な実験技術のひとつとされ、その過程で様々なノウハウが蓄積されてきた。しかし1
970年代から無麻酔動物での行動中の神経活動の記録法が発展してきたこと、また 単離培養細胞やスライスなどのin vitroでのパッチクランプ法などの実験系がより洗
練されてきたこと、さらには機能的MRIなど非侵襲的脳機能イメージング法が発展 してくるに従って、麻酔下の動物での電気生理実験は「辛くて大変な割にはあまり大
したことがわからない実験」として敬遠され、すっかり下火になってしまっていた感 があった。しかし、近年遺伝子改変動物の開発技術が発展し、分子生物学がより個体
の機能の解明を目指すようになってきたこと、さらには培養細胞やスライスで解析で きることの限界が認識されるに従って、条件を制御した状態で個体機能を解析できる
麻酔下個体動物での急性電気生理学的実験の有用性が再認識されるようになってきて いる。
本コースでは麻酔下動物での電気生理実験の最も基本的な実験手技を習得することを 目的として、麻酔下ラットにおいて視覚および体性感覚刺激に対する大脳皮質感覚野
と中脳上丘におけるフィールド電位や単一ニューロンの応答を記録する手法を実習す る。特に麻酔下で動物の全身状態を良好に保つことが実験を成功させる秘訣である。
様々な生体機能の指標に注意を払いながらより良い実験データを取得する方法を学ぶ。
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13.「慢性動物実験法入門」
覚醒下の実験動物に様々な課題を遂行させ、その際の神経活動を記録・解析するという「慢性実験」は、神経回路が実際に生体内でどのように働いているのかを解明する上で強力な手段です。様々な脳領域に刺激電極を留置しておくことにより、従来の急性実験と同様に電気生理学的に神経回路を解析することも可能です。また、覚醒下で行うため、麻酔の影響などを排除することや、繰り返し同一の実験動物を使うこともできます。さらに、標識物質の注入による線維連絡の研究や、薬物注入による薬理学的実験の際にも、慢性実験のセットアップは有用です。しかし、このような実験技術は手から手へと受け継がれることが多く、なかなか体系だって習得する機会が少ないのが現状です。本コースでは、このような慢性実験を始めたばかり、あるいはこれから始めようとする研究者や大学院生を対象に、実験動物からの神経活動記録、金属電極作成、基本的なハードウエアやソフトウエアなどの周辺技術を題材に実習を行います。
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14.「視知覚の脳内メカニズムの実験的解析」
視知覚の神経機構を明らかにするためには、ある視知覚が生じている時に大脳皮質 視覚野においてどのようなニューロン活動が生じ、視知覚の変化に伴ってこのニュー
ロン活動がどのように変化するのかを調べる必要があります。本コースではこのよう な研究の考え方を学び、研究を行う基礎となる電気生理実験および心理物理実験の実
習を行います。電気生理実験では、当研究室で行われている微小電極を用いてサルの 視覚皮質からニューロン活動を記録する実験を体験することにより、実験目的の設
定、課題や刺激のデザイン、記録に必要なシステムについて理解を深めます。一方、 知覚そのものを客観的に測定する方法を理解するために、パソコン上に作成し呈示す
る視覚刺激を用いた心理物理実験を体験し、さらに知覚とニューロン活動(を対応付け る方法について学びます。本コースは視知覚の研究にしぼって第一線の研究を初心者
に分かりやすく体験してもらうことを目的としています。将来、この分野の研究に関 わりたいと考えている大学院生、若手研究者を歓迎します。
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15.「脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎」
脳磁図は、脳波や機能的磁気共鳴画像とともにヒト脳機能研究において重要かつ大変有用な方法として広く認められています。しかしどの方法にも必ず一長一短があり、最適な目的に使われなければ有用性を発揮できないばかりか間違った結論を導くことにもつながりかねません。本コースでは、脳磁図の測定原理の講義を行い、実験の立案からデータの取得、解析方法まで体験していただきます。今後脳磁図を使う受講者は、脳磁図で何ができるか、わかるかを実感し、今後の研究に生かせることでしょう。また、脳波や機能的磁気共鳴画像との違いが鮮明になり、個々の方法論の正当な評価をすることができるようになるでしょう。
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16.「ヒト脳機能マッピングにおけるデータ解析入門」
機能的磁気共鳴画像法(functional MRI)に代表される脳機能画像法の発達に より、人体を傷つけることなく脳活動を可視化出来るようになった。得られた
データの解析には画像処理や統計学的手法の応用が不可欠であるが、SPMを代 表とする解析パッケージが容易に手に入ることもあり、その中身を理解しなく とも簡単に結果が得られる状況にある。データ処理手法は近年ますます高度化
・複雑化し、初心者が独学で理解するには難しい面もあるが、誤った取扱い (不適切な解析、誤った解釈など)は、思わぬ誤解を招くだけでなく真実からか け離れた結論を導き出す危険性があるため注意を要する。
本コースでは、脳機能画像解析を始めたばかりの初心者を対象に、主に画像 データの処理および統計解析の理論と実際について、機能的MRIデータを教材 とした講義と実習を行う(MRIを使った撮像実習は行わない)。これらを通し
て脳機能画像法のもつ可能性とピットホールについてバランスのとれた理解を 深められるようにしたい。
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