2008年 生理学研究所 第19回 生理科学実験技術トレーニングコース“生体機能の解明に向けて”−分子・細胞レベルからシステムまで−

Last update: 09-June-2008

日程 / 7月28日(月)〜8月1日(金)

7月28日(月)13:00−

講演・研究紹介
⇒ プログラム詳細

7月29日(火)-8月1日(金)

実習コース
⇒ 実習内容/詳細

7月30日(水)18:00-20:00

トレーニングコース交流会

8月1日(金)15:00-

研究室訪問

講演・研究紹介

7月28日(月)午後(岡崎コンファレンスセンターにて)

12:15- 受付開始

13:00- 挨拶 岡田 泰伸 生理学研究所 所長

13:05- 講演 深田 正紀 生理学研究所・生体膜研究部門・教授
  「AMPA型グルタミン酸受容体の制御機構」
15:00- 研究紹介
各部門・研究室から関連領域で注目されている実験技術を中心に話題を提供してもらいます)

時間 研究部門
15:00-15:10 統合バイオナノ形態生理(永山研)
15:10-15:20 分子神経生理(池中研)
15:20-15:30 遺伝子改変動物制作室(平林研)
15:30-15:40 神経機能素子(久保研)
15:40-15:50 多光子顕微鏡室(根本研))
15:50-16:00 生体恒常機能発達機構(鍋倉研)
16:00-16:10 統合バイオ 神経分化(岡村研)
16:10-16:20 統合バイオ 細胞生理(富永研)
16:20-16:30 神経シグナル(井本研)
16:30-16:40 休憩
16:40-16:50 大脳神経回路論(川口研)
16:50-17:00 脳形態解析(重本研)
17:00-17:10 生殖・内分泌系発達機構(箕越研))
17:10-17:20 認知行動発達機構(伊佐研)
17:20-17:30 生体システム(南部研)
17:30-17:40 感覚認知情報(小松研)
17:40-17:50 感覚運動調節(柿木研)
17:50-18:00 心理生理学(定藤研)
18:00-18:10 機能協関(岡田研)

実習コース 一覧

No. タイトル 担当部門 担当者 受け入れ人数
1 位相差電子顕微鏡の原理と実践 ナノ形態生理 Radostin Danev 5名
2 神経幹細胞の培養法 分子神経生理 等 誠司 4名
3 海馬神経初代培養と生細胞イメージング 生体膜 深田 正紀 3名
4 遺伝子改変マウス作製の基礎から応用へ 遺伝子改変動物制作室 冨田 江一 6〜8名
5 in vitro 発現系を用いたイオンチャネル・受容体の機能解析 神経機能素子 久保義弘 4名
6 2光子顕微鏡による細胞の動態と機能の可視化解析法ーその基礎と応用 多光子顕微鏡室
生体恒常機能発達機構
根本知己
鍋倉淳一
4名
7 パッチクランプ法 神経分化
生体恒常機能発達機構
細胞生理
神経分化(久木田)
生体恒常機能発達機構(鍋倉, 石橋)
細胞生理(富永, 山中, 柴崎, 曽我部)
3名
6名
9名
8-1 スライスパッチクランプ法(基礎コース) 神経シグナル大脳神経回路論 井本 敬二
川口 泰雄
10名
6名
8-2 スライスパッチクランプ法―応用コース 脳形態解析 籾山 俊彦 2〜3名
9 ゼブラフィッシュを用いた神経回路機能の解析 神経分化 東島 眞一 2〜3名
10 摂食・飲水行動発現機構入門 生殖・内分泌系発達機構 箕越 靖彦 3〜4名
11 麻酔下動物での急性電気生理実験 認知行動発達機構 伊佐 正 6名
12 慢性動物実験法入門 生体システム 南部 篤 8名
13 視知覚の脳内メカニズムの実験的解析 感覚認知情報 伊藤 南 4名
14 脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎 感覚運動調節 金桶 吉起
柿木 隆介
6名
15 脳機能画像解析入門 心理生理学 齋藤 大輔 30名
16-1 生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(1)
(PICマイコンによる温度コントローラーとバスチェンバーの作製)
技術課 大庭 明生 4名
16-2 生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(2)
(C言語によるPICプログラミング)
技術課 大庭 明生 4名

実習コース詳細

1.「位相差電子顕微鏡の原理と実践 (Phase Contrast Cryo-Electron Microscopy and Single Particle Analysis of Ice-Embedded Biological Specimens)」

The course is aimed at introducing beginner to intermediate level electron microscopists to the methods and techniques of cryo-electron microscopy of biological specimens. In addition the students will have the chance to learn first-hand the novel methods of Zernike phase contrast and Hilbert differential contrast and their application to single particle analysis of protein samples. The Zernike and Hilbert techniques were firstly developed and established in our laboratory and are gradually gaining popularity worldwide.
The course will focus mostly on the experimental aspects of phase contrast cryo-electron microscopy with a short introduction to the theoretical basis. The participants will first learn how to prepare cryo-specimens of proteins and other small biological objects by cryo-plunging. Then they will be introduced to the low dose operation, phase plate manipulation and data collection by a 300 kV cryo-electron microscope. Finally, they will use the collected data to generate a 3D map of the investigated protein by single particle analysis based software reconstruction.

2.「神経幹細胞の培養法」

 神経幹細胞は、発達期の脳において神経細胞やグリア細胞を供給するのみならず、成体の脳においても継続的に神経細胞を産生し、脳の機能維持に関与していると考えられている。しかし、神経幹細胞の発生や増殖・成体脳での維持などの分子機構や、成体脳神経幹細胞による神経細胞新生と脳高次機能・精神活動との関連には不明な点が多く、活発な研究領域である。神経幹細胞には特異的な細胞表面マーカーが知られていないため、その検出には、?分裂細胞を標識することで組織化学的に検出する方法と、?培養による検出法の2つが広く用いられている。本コースでは主に、?で使われる神経幹細胞の培養法(Neurosphere assay)を見てもらい、その利点と限界を理解していただく。その上で、本研究室で行われているNeurosphere assayの技術を実際に体験することにより、受講者の今後の研究に生かしてもらうことを目的とする。

3.「海馬神経初代培養と生細胞イメージング」

海馬神経初代培養法は、神経細胞の分化(軸索、樹状突起形成、シナプス発達)やシナプス可塑性を解析するために有用な手法として広く用いられるようになっている。しかし、多様なファクターが培養の成否に関与するため、良質で長期間安定な培養を再現性高くおこなうことが難しいことも多い。本コースでは、"比較的簡便で失敗しにくい"海馬神経初代培養法を体験する。また、初代培養神経細胞への遺伝子導入法および生細胞イメージング法(長時間タイムラプス観察、全反射蛍光顕微鏡観察およびPhotoactivation法を用いた蛋白質動態観察)を体験する。通常の細胞培養の経験があることが望ましい。

4.「遺伝子改変マウス作製の基礎から応用へ (遺伝子改変動物作製(マウス))」

マウスでは、生殖細胞への分化能を持ったES細胞レベルで、標的遺伝子組み換えを施し、その組み換えES細胞を受精卵へインジェクションすることで、標的遺伝子の配列を自由自在に改変させた個体を作り出すことができる。分子生物学的手法と発生工学的手法を駆使して作製したこれらの遺伝子改変動物(ノックアウトマウス)は、ヒト疾患の発症メカニズムや脳神経機能の分子メカニズムを解明するのに大いに役立っている。本コースでは、マウスにおける、1) ES細胞培養の基礎、2) 実験動物の取り扱い、3) 受精卵の採取(過剰排卵誘起、卵管・子宮灌流)、4) 受精卵の顕微操作(8-cellインジェクション)、5) 胚移植(胚の子宮内移植)といった発生工学の基本技術について実習する。

5.「in vitro 発現系を用いたイオンチャネル・受容体の機能解析」

イオンチャネル・チャネル型受容体・代謝型受容体等の膜機能蛋白を、アフリカツメガエル卵母細胞、HEK293細胞等の in vitro 発現系を用いて発現させ、その分子機能と細胞応答を、2本刺し膜電位固定法、パッチクランプ法、細胞内Ca2+イメージング法、FRET法に基づいた分子プローブによる cAMP解析法などにより記録するトレーニングを行う。データの解析法や実験の統合的な進め方についてのトレーニングも行う。少人数制とし、マンツーマンに近い形での指導を行う。電気生理学の初心者、分子生物学の初心者も歓迎し、各自の希望に沿えるよう個別対応も行う。

6.「2光子顕微鏡による細胞の動態と機能の可視化解析法−その基礎と応用」

2光子顕微鏡は生体組織深部のin vivoイメージングや定量的な蛍光観察、刺激を可能とする新しい生理学的手法で多くの成果を上げていますが、それに触れる機会はまだ少なく、その正しい理解や応用は必ずしも容易ではありません。また、蛍光顕微鏡や光学顕微鏡の基本的な操作、作動原理について指導を受ける機会は減ってきています。そこで、本コースでは、世界でトップクラスの性能を持つ2光子励起顕微鏡を用いた観察を体験することで、光学顕微鏡の基礎を理解していただくとともに、細胞内カルシウムや開口放出のイメージング、大脳新皮質in vivoイメージング、ケイジド試薬の利用など、当研究室で日常的に行われている応用例に触れていただきます。

7.「パッチクランプ法 (パッチクランプ基本法とその応用(バイオ分子センサーパッチクランプ法))」

パッチクランプ法による実際の電流記録と活動電位の関連を基礎から学ぶことができます。神経細胞の膜電位依存性Na+及びK+イオンチャネルの活動をパッチクランプ法で記録します。活動電位の発生機構を理解するために、Hodgkin-Huxleyの式のコンピュータシミュレーションなどを活用します。こうした基本法を修得した後、希望者は以下のような応用技術を学ぶことができます。
1) 細胞内情報伝達関連分子をintactに保ったまま、イオンチャネルなどの各種細胞センサー活動を観察できる穿孔パッチ法の技術/応用を修得します。具体的には、ニスタチン穿孔法を利用した受容体-イオンチャネルの細胞内クロストーク、およびグラミシジン法を利用した神経細胞本来のGABA応答や細胞内Cl-濃度調節機構を観察する技術/応用を習得します。また、標本として、任意の部位から神経細胞を急性単離する技術も修得します。
2) 非選択性陽イオンチャネルで高いCa2+透過性を有する温度感受性TRPチャネルの機能解析を学びます。具体的には、感覚神経細胞の初代培養法とHEK293細胞への温度感受性TRPチャネル遺伝子の導入法を修得します。そして、それらの細胞を用いて温度変化による電流活性化をパッチクランプ法によって観察します。温度と電流情報を同時に取り込み、電流の温度依存曲線を作成します。

8-1.「スライスパッチクランプ法」

パッチクランプ実験の初心者を対象に、脳スライス標本の作製手順、細胞の選別法、ホールセル記録の基本的手技を指導する。本コースは、パッチクランプ法の原理を理解するとともに、スライスパッチクランプ記録が各自でできるようになることを目標とする。実習では、マウスやラットの脳スライス標本(大脳皮質・小脳・海馬など)を作製し、current clamp法ならびにvoltage clamp法を用いてニューロンの発火活動やシナプス電流を記録する。また、データの解析方法についても概説する。さらに希望者は、バイオサイチンによる細胞標識を行い、パッチクランプ記録に供した細胞の形態を可視化・観察する方法を学ぶ。

8-2.「スライスパッチクランプ法(応用コース)」

パッチクランプ法が様々な分野に取り入れられている現在において、周りに電気生理学の専門家のいない環境で、パッチクランプ実験に苦心されている方も多いと思う。本コースは、脳スライスや培養細胞などでパッチクランプ実験の経験がある人を対象に、スライスパッチクランプ法の電気生理学的理論の理解を深め、正しい技術を習得し、中枢神経系のニューロンとシナプスの基本的性質を電気生理学的に正確に記録・解析できるようになることを目的とする。また、現在直面している問題について実際的なトラブルシューティングを試みる。

具体的内容
1)大脳皮質の錐体細胞、線条体細胞、前脳基底核細胞等からホールセル記録を行なう
2)線条体ニューロンでは、発火パターン、膜特性によるニューロンサブタイプの同定を行なう。
3)
ホールセル記録を行ない、記録ニューロン近傍に細胞外電気刺激を与えることにより興奮性および抑制性シナプス電流を誘発し、これらのシナプス電流の電位依存性、薬理学的特性等を解析する。
4)テトロドトキシン存在下に自発性微小シナプス電流を記録し、その頻度、振幅分布の解析を行なう。

スライスパッチクランプ実験を始めた人がまず直面する問題が、"良いスライス作成"である。スライサーのメンテナンス、溶液の問題等、状態の良いスライス作成法を常に心がけながら、上記の実験を進めたい。

9.「ゼブラフィッシュを用いた神経回路機能の解析」

ゼブラフィッシュの幼魚を用いて神経回路の研究を行うことの最大の利点は、体がほとんど透明であることであるために、蛍光性の色素を用いて神経細胞を高精度に可視化できることにある┬鼻本コースでは、第一に、DNAを胚に注入することによってGFPを発現させる。いくつかの異なるコンストラクトを用いることによりそれぞれ異なったタイプの神経細胞をラベルすることができ、ラベルされた神経細胞の形態を通常の落斜蛍光顕微鏡および共焦点顕微鏡で観察する。第二に、化学性の蛍光色素を筋肉あるいは脊髄に注入することによりレトログレードなラベリングを行い、神経細胞の形態観察を行う┬鼻さらに、カルシウム濃度依存性の蛍光色素でこのラベリングを行い、ラベルされた運動神経細胞、あるいは延髄網様体神経細胞で、逃避行動に際してのカルシウムイメージングを行う┬鼻最後に、GFPでラベルされた神経細胞からの電気生理学的な記録を紹介する(これに関しては、時間の都合により、実験は講師によって行われる)。

10.「摂食・飲水行動発現機構入門」

 摂食・飲水行動は生命維持に関わる最も基本的な本能行動であり、生体内外の環境変化を中枢神経系においてモニターすることによって惹起される。本コースでは、これら本能行動の神経回路網を明らかにする研究法の一つとして、マウス視床下部・脳室内に微量の神経伝達物質、ホルモンを投与し、摂食・飲水行動の発現、自発運動量の変化を観察する。特に本実習においては、1)マウス視床下部神経核・脳室内への微小カニューレの挿入、頭蓋への固定技術、2)無麻酔・非拘束下において、固定した微小カニューレよりホルモン・神経ペプチドを投与する技術、3)マウスの摂食・飲水行動ならびに自発運動量を観察・定量化する基礎技術を学習する。また、マウスは実験者及び実験環境に慣れ難いため、行動実験においてはマウスへのストレスを最小限にするなどの注意が特に必要である。そこで、マウスのハンドリング操作を含む、マウス個体を用いた実験法の基本的事項についても併せて学習する。

11.「麻酔下動物での急性電気生理実験」

麻酔下の動物で神経回路を構成する細胞間の結合関係や神経回路の動的特性、また個々のニューロンの細胞内電位や膜特性を計測する実験は1950年代から微小電極法の開発に伴って急速に進歩し、1960−70年代までは神経生理学における主要な実験技術のひとつとされ、その過程で様々なノウハウが蓄積されてきた。しかし1970年代から無麻酔動物での行動中の神経活動の記録法が発展してきたこと、また単離培養細胞やスライスなどのin vitroでのパッチクランプ法などの実験系がより洗練されてきたこと、さらには機能的MRIなど非侵襲的脳機能イメージング法が発展してくるに従って、麻酔下の動物での電気生理実験は「辛くて大変な割にはあまり大したことがわからない実験」として敬遠され、すっかり下火になってしまっていた感があった。しかし、近年遺伝子改変動物の開発技術が発展し、分子生物学が個体の機能の解明を目指すようになってきたこと、さらには培養細胞やスライスで解析で きることの限界が認識されるに従って、条件を制御した状態で個体機能を解析できる麻酔下個体動物での急性電気生理学的実験の有用性が再認識されるようになってきている。本コースでは麻酔下動物での電気生理実験の最も基本的な実験手技を習得することを目的として、麻酔下ラットにおいて視覚および体性感覚刺激に対する大脳皮質感覚野と中脳上丘におけるフィールド電位や単一ニューロンの応答を記録する手法を実習する。特に麻酔下で動物の全身状態を良好に保つことが実験を成功させる秘訣である。 様々な生体機能の指標に注意を払いながらより良い実験データを取得する方法を学ぶ。

12.「慢性動物実験法入門」

 覚醒下の実験動物に様々な課題を遂行させ、その際の神経活動を記録・解析するという「慢性実験」は、神経回路が実際に生体内でどのように働いているのかを解明する強力な手段です。慢性実験は主に霊長類を用いた実験手技として発達・洗練されてきたのですが、げっ歯類にも応用可能で、とくに遺伝子改変動物を用いたin vivo記録は、遺伝子と行動との間をつなぐ重要なステップです。慢性実験は覚醒下で行えるため、麻酔の影響を排除することや、繰り返し同一の実験動物を使うことが可能です。さらに従来の急性実験の手法を流用し、様々な脳領域に刺激電極を留置し電気生理学的に神経回路を解析することや、脳局所への薬物注入による行動変化なども観察することができます。しかし、このような実験技術は各研究室内で手から手へと受け継がれることが多く、なかなか体系だって習得する機会が少ないのが現状です。本コースでは、このような慢性実験を始めたばかり、あるいはこれから始めようとする研究者や大学院生を対象に、実験動物からの神経活動記録、金属電極作成、基本的なハードウエアやソフトウエアなどの周辺技術を題材に実習を行います。

13.「視知覚の脳内メカニズムの実験的解析」

視知覚の神経機構を明らかにするためには、ある視知覚が生じている時に大脳皮質視覚野においてどのようなニューロン活動が生じ、視知覚の変化に伴ってこのニューロン活動がどのように変化するのかを調べる必要があります。本コースではこのような研究の考え方を学び、研究を行う基礎となる脳活動計測(電気生理およびfMRI計測)実験および心理物理実験の実習を行います。脳活動計測実験では、当研究室で行われている微小電極法およびfMRIを用いてサルの視覚皮質から脳活動を記録する実験を体験することにより、実験目的の設定、課題や刺激のデザイン、記録に必要なシステムについて理解を深めます。一方、知覚そのものを客観的に測定する方法を理解するために、パソコン上に作成し呈示する視覚刺激を用いた心理物理実験を体験し、さらに知覚とニューロン活動を対応付ける方法について学びます。本コースは視知覚の研究にしぼって第一線の研究を初心者に分かりやすく体験してもらうことを目的としています。将来、この分野の研究に関わりたいと考えている大学院生、若手研究者を歓迎します。

14.「脳磁図によるヒト脳機能研究の基礎」

脳磁図は、脳波や機能的磁気共鳴画像とともにヒト脳機能研究において重要かつ大変有用な方法として広く認められています。しかしどの方法にも必ず一長一短があり、最適な目的に使われなければ有用性を発揮できないばかりか間違った結論を導くことにもつながりかねません。本コースでは、脳磁図の測定原理の講義を行い、実験の立案からデータの取得、解析方法まで体験していただきます。今後脳磁図を使う受講者は、脳磁図で何ができるか、わかるかを実感し、今後の研究に生かせることでしょう。また、脳波や機能的磁気共鳴画像との違いが鮮明になり、個々の方法論の正当な評価をすることができるようになるでしょう。

15.「脳機能画像解析入門 (ヒト脳機能マッピングにおけるデータ解析入門)」

機能的磁気共鳴画像法(functional MRI)に代表される脳機能画像法の発達により、人体を傷つけることなく脳活動を可視化出来るようになりました。そこで得られたデータの解析には、画像処理や統計学的手法の応用が不可欠ですが、SPMをはじめとする解析パッケージが容易に手に入ることもあり、中身を理解しなくとも簡単に結果が得られる状況にあります。しかし、データ処理手法は近年ますます高度化・複雑化し、初心者が独学で理解するには難しい面もあり、誤った取扱い(不適切な解析・解釈等)は、真実からかけ離れた結論を導き出すだけでなく、思わぬ誤解を招く危険性があるため注意を要します。 本コースでは、脳機能画像解析を始めたばかりの初心者を対象に、主に機能的MRIデータを教材とした画像処理および統計解析の理論と実際について、講義と実習を行います(MRIを使った撮像実習は行わない)。そして、これらを通して脳機能画像法のもつ可能性とピットフォールについてバランスのとれた理解を深められるような講習を行います。

16-1.「生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(1) (PICマイコンによる温度コントローラーとバスチェンバーの作製)」

電気生理の実験手法の一つであるパッチクランプ実験をテーマに、電気生理実験に有用な灌流液の温度調節が行える「温度コントローラ」と「アクリル製バスチェンバー」の作製を行います。
温度コントローラは、バスチェンバーの温度を一定に保持したいときに、バスに供給する灌流液やバス自体の溶液温度をモニターしながらヒーターをオン・オフするための回路で、これらはPICマイコンによって制御します。
バスチェンバーは、顕微鏡下で細胞を生かしたままで実験するときに、灌流液を3種類まで速やかに交換することができる機能を持ったチェンバーです。
このような「ものづくり」の実習を通し、生理学実験に必要な実験機器の製作技術の習得と応用力の養成を目的としています。

16-2.「生理学実験のための電気回路・機械工作・プログラミング(2) (C言語によるPICプログラミング)」

種々の実験の制御や計測に応用可能なPIC(Peripheral Interface Controller)を取り上げ,PICを応用するためのハードウェアとソフトウェアの基礎を学びます。
ハードウェア実習ではPIC本体の構成と機能ならびに周辺部品の概要を学び,「PICマイコン学習キット」の作製を行います。
ソフトウェア実習では,C言語のプログラミングの基礎を学習し,PICを制御するためのプログラムを作成します。作成したプログラムは,PICライタにて書き込みを行い,先に作製した「PICマイコン学習キット」を使って動作確認を行います。このような実践型の実習を通し,生理学実験に必要となる実験機器の製作技術の基本と応用力の養成を目的とします。