連続超薄切切片観察による神経組織の高精度3次元再構築法 |
大脳皮質機能研究系 大脳神経回路論研究部門 |
大脳皮質の局所神経回路構築を解析する上で、各種神経細胞上にどれほどのシナプス結合があるかを解析する事は非常に大事な事である。その解析方法として、連続超薄切切片を電子顕微鏡を使って観察し、神経組織を3次元再構築し解析する方法が考えられる。私達は、この方法を使い、これまで、多くの神経細胞を解析してきたが、下記の2つの問題点に気がついた。1)超薄切切片の厚みの正確な測定が、3次元再構築像の質を大きく左右する。2)切片面に平行あるいは平 行に近い角度に存在するクレフト面を持つシナプス結合は、従来のシナプス結合の定義による観察では見逃してしまう為、本来のシナプス入力の密度よりもかなり少ないシナプス数しか探知出来ない。これら2つの問題点を改善する為に下記の方法を今回報告した。まず、超薄切切片の厚み測定方法であるが、従来、 minimal folding法、干渉光測定法、ミトコンドリアを利用した推測法が使われて来たが、いずれも、必ずしも正確な厚みを測定する方法とは言えない。私達は、1nmの解像度を持つカラー3Dレーザ顕微鏡を使って超薄切切片の厚みを測定し、信頼できる測定が可能である事を確認した。次に、シナプス結合の同定に関して、切片面に平行あるいは平行に近い角度のクレフト面を持つシナプス結合は、連続切片で、従来のシナプス結合の同定の為の定義の順序通りにシナプス要素 が観察できる場合はシナプス結合と判断して良い事を、tomography解析等により見出した。シナプス確認の為の新しいこの方法を使って、 parvalbumin陽性樹状突起表面に入力するシナプスの数を測定した所、およそ1/3から半分程度のシナプスを新たに確認する事ができた。この事は、旧来のシナプス同定法だけを使った場合、シナプスの多くを見落としてしまう事を示している。今後は、この新しい方法を使った、神経回路構築の定量的解 析が望まれる所である。大脳皮質の局所神経回路構築を解析する上で、各種神経細胞上にどれほどのシナプス結合があるかを解析する事は非常に大事な事である。その解析方法として、連続超薄切切片を電子顕微鏡を使って観察し、神経組織を3次元再構築し解析する方法が考えられる。私達は、この方法を使い、これまで、多くの神経細胞を解 析してきたが、下記の2つの問題点に気がついた。1)超薄切切片の厚みの正確な測定が、3次元再構築像の質を大きく左右する。2)切片面に平行あるいは平 行に近い角度に存在するクレフト面を持つシナプス結合は、従来のシナプス結合の定義による観察では見逃してしまう為、本来のシナプス入力の密度よりもかなり少ないシナプス数しか探知出来ない。これら2つの問題点を改善する為に下記の方法を今回報告した。まず、超薄切切片の厚み測定方法であるが、従来、minimal folding法、干渉光測定法、ミトコンドリアを利用した推測法が使われて来たが、いずれも、必ずしも正確な厚みを測定する方法とは言えない。私達は、1nmの解像度を持つカラー3Dレーザ顕微鏡を使って超薄切切片の厚みを測定し、信頼できる測定が可能である事を確認した。次に、シナプス結合の同定に関 して、切片面に平行あるいは平行に近い角度のクレフト面を持つシナプス結合は、連続切片で、従来のシナプス結合の同定の為の定義の順序通りにシナプス要素 が観察できる場合はシナプス結合と判断して良い事を、tomography解析等により見出した。シナプス確認の為の新しいこの方法を使って、parvalbumin陽性樹状突起表面に入力するシナプスの数を測定した所、およそ1/3から半分程度のシナプスを新たに確認する事ができた。この事は、旧来のシナプス同定法だけを使った場合、シナプスの多くを見落としてしまう事を示している。今後は、この新しい方法を使った、神経回路構築の定量的解 析が望まれる所である。 |
Kubota Y, Hatada S, Kawaguchi Y (2009) Important factors for the three-dimensional reconstruction of neuronal structures from serial ultrathin sections. Frontiers in Neural Circuits, Volume 3, Article 4 |
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(A, D) 切片面に平行あるいは平行に近い角度のクレフト面を持つシナプス結合を連続切片(70nm)でとらえた電子顕微鏡像。従来のシナプス結合の同定の為の定義の順序通りにシナプス要素が観察できる。 (A) 前神経終末にはシナプス小包が多く存在する(星印) (B) 前神経終末格子 (C) シナプス後膜肥厚(PSD) (D) シナプス後樹状突起の細胞質 (E, F) 左の連続写真から作成したパルブアルブミン陽性樹状突起(黄色)とそれにシナプス接着しているGABA陽性神経終末(赤色)GABA陰性神経終末(青色)パルブアルブミン陽性神経終末(桃色)(E) 従来のシナプス同定方法で確認できたシナプス神経終末。手前正面にはシナプス神経終末が分布していないのがわかる。 (F) 本研究で提唱した新しい同定方法で確認できたシナプス神経終末を加えて再構築した像。樹状突起の表面全体が神経終末で覆われているのがわかる。 |