大脳皮質興奮性神経細胞はその初期投射から大きく2つに分類できる

大脳皮質機能研究系 大脳神経回路論研究部門

大脳皮質興奮性ニューロンは、皮質内外の領域を結ぶ投射性ニューロンです。発生過程においてこれらニューロンは皮質脳室帯(VZ)から生じたのち表層に向かって移動し6層構造(I-VI層)を形成します。この時、後から生まれた細胞が先に生まれた細胞よりも表層に配置するというインサイドアウトパターンをとることが一般に知られています。これらニューロンの投射先は、皮質外(subcortical)と皮質内(交連性 callosal)の大きく2つに分類できますが、皮質外投射ニューロンが深層(V, VI層)のみに分布するのに対し、皮質内投射ニューロンは第I層を除くすべての層に分布しています。本研究では、皮質興奮性ニューロンの投射タイプがどのように発生するかを明らかにする目的で、初期軸索形成過程を解析しました。その結果、将来II-VI層に配置するどのニューロンも中間帯(IZ)を移動する過程で軸索形成を開始していることがわかりました。さらに、軸索の向きは外側(lateral)か内側(medial)かのいずれかであること、先に分化したものは外側に後から分化したものは内側に投射するという時期特異性があることがわかりました。ニューロンマーカーの発現ならびにその後の層分布から、これらはそれぞれ皮質外・皮質内投射ニューロンに発達すると考えられました。また、この考えに一致して、同じ深層であっても皮質外投射ニューロンの方が皮質内投射ニューロンよりも先に誕生のピークを迎えることがわかりました。以上の結果から、皮質興奮性ニューロンは初期投射によって2つのタイプに分類されること、また、これらのニューロンは異なる時間枠で順次生まれることが明らかとなりました。これまでニューロンの層分布と誕生日に相関があることは知られていましたが、今回の研究により、ニューロンの投射タイプと誕生日により強い相関があることが示されました。

左:軸索の初期形成過程。II-VI層を構成する皮質興奮性ニューロンは、脳室帯(VZ)を離れたのち中間帯(IZ)を移動中に軸索を形成する。軸索の方向は先に現れる外側(lateral/subcortical赤)と後から現れる内側(medial/callosal緑)の2つに分けられる。右:成熟した脳の軸索投射。各層には様々な投射パターンのニューロンが分布しているが、大きく皮質外投射(赤)と皮質内投射(緑)の2つにわけられる。今回の研究結果から、これらはそれぞれ共通した外側、内側投射ニューロンから出発し、その後の分岐や刈り込みによって固有の投射パターンを形成すると考えられる。
 

Hatanaka Y, Namikawa T, Yamauchi K, Kawaguchi Y (2015)
Cortical Divergent Projections in Mice Originate from Two Sequentially Generated, Distinct Populations of
Excitatory Cortical Neurons with Different Initial Axonal Outgrowth Characteristics.
Cereb Cortex. First published online: April 16, 2015. doi: 10.1093/cercor/bhv077