生理学研究所年報 第30巻
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1.イオンチャネル・トランスポーターと心血管機能:
学際的取り組みによる新戦略

2008年11月19日-11月20日
代表・世話人:古川哲史(東京医科歯科大学難治疾患研究所生体情報薬理分野)
所内対応者:久保義弘(自然科学研究機構生理学研究所神経機能素子研究部門)

(1)
血管平滑筋細胞で発生するCa2+スパークに関与する分子群のTIRF画像解析
山村寿男,大矢 進,今泉祐治
(名古屋市立大学 大学院薬学研究科 細胞分子薬効解析学分野)

(2)
細胞配列のパターン化による興奮伝播の制御
~骨格筋芽細胞・心筋細胞共培養系における催不整脈性の検討
高成広起1,李 鍾國1,三輪佳子1,井藤 彰3,中井淳一4,本多裕之2,児玉逸雄1
1名古屋大学環境医学研究所 心・血管分野,2名古屋大学大学院工学研究科,
3九州大学大学院工学研究科,4理化学研究所 脳科学総合研究センター)

(3)
ペースメーカーチャネルHCN4は,筋特異的転写因子MEF2によって直接制御される
鷹野 誠1,村松慎一2,島崎久仁子3,魚崎英毅4
倉富 忍1,山下 潤4,桑原宏一郎5
1自治医大・生理学・生物物理学部門,2自治医大・神経内科,
3自治医大・生理学・脳神経生理学部門,
4京都大学・再生医学研究所,5京都大学・医学研究科・内分泌代謝内科)

(4)
拡張型心筋症における心室性不整脈のイオン機序:
変異トロポニンTノックインマウスを用いた解析
塩谷孝夫,森本幸生,頴原嗣尚
(佐賀大学医学部 生体構造機能学講座 器官・細胞生理学分野,
九州大学大学院医学研究院 生体情報科学講座 臨床薬理学分野)

(5)
サイクリックAMPエフェクター,Epacによる心臓線維化抑制作用
横山詩子1,石川義弘1,南沢 享2
1横浜市立大学大学院医学研究科循環制御医学,
2早稲田大学先進理工学部生命医科学科)

(6)
S-nitrosylationを介したb 受容体シグナル制御
松本明郎(大阪大学微生物病研究所疾患糖鎖学)

(7)
心室細動誘発のトンネル伝播仮説:二相性ショックの優位性と関連して
芦原貴司(滋賀医科大学呼吸循環器内科・不整脈センター)

(8)
心筋細胞ネットワークによるオンチップ・リエントリー・モデルを用いた
期外収縮計測技術の開発
安田賢二,金子智行,野村典正(東京医科歯科大学・生体材料工学研究所)

(9)
Cav1.2 Ca2+チャネルのCaMによる調節機構
郭 鳳,蓑部悦子,矢沢和人,Hadhimulya Asmara,韓 冬雲,はお麗英,亀山正樹
(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 神経筋情報生理学,
中国医科大学 薬学院薬理学教室)

(10)
L型 Ca2+チャネルを介した心筋 Ca2+シグナル制御と破綻の分子機構
赤羽悟美,中瀬古寛子,伊藤雅方,水流弘通(東邦大学医学部薬理学)

(11)
心筋細胞におけるカルシウムチャネル不活性化モデル
村上慎吾,河津俊宏,イアンフィンドレイ,鈴木慎悟,赤羽悟美,野村泰伸,倉智嘉久(大阪大学医学部薬理学講座)

(12)
ヒト冠動脈平滑筋増殖におけるAmlodipineの作用と
Polycystic Kidney Disease (PKD1)の役割
大場貴喜,村上 学,渡邊博之,伊藤 宏,尾野恭一
(秋田大学医学部機能制御医学講座,細胞制御学分野,
内科学講座循環器内科学分野)

(13)
 a1受容体を介する血管トーヌス制御機構:TRPC3/NCX1共役系の役割
喜多紗斗美,伊豫田拓也,岩本隆宏(福岡大学医学部薬理学)

(14)
アンジオポエチン-1/Tie2受容体シグナルによる血管安定化・血管新生制御機構
福原茂朋,望月直樹(国立循環器病センター研究所・循環器形態部門)

(15)
圧負荷による心臓の線維化におけるG12/13蛋白質の役割
西田基宏,上村 綾,仲矢道雄,黒瀬 等(九州大・薬・薬効安全性)

(16)
ラット腱細胞でのNa+-Ca2+交換輸送体の発現と機能
坂本多穂1,色摩弥生1,大和田有紀1,岩本隆宏2
和栗 聡3,和田郁夫4,木村純子1
(福島医大・医・1薬理,3解剖組織,4細胞科学・2福岡大学・医・薬理)

(17)
ナトリウム利尿ペプチドの心保護作用におけるTRPC6の役割
木下秀之1,桑原宏一郎1,井上隆司2,西田基宏3
黒瀬 等3,清中茂樹4,森 泰生4,中尾一和1
1京都大学大学院医学研究科内分泌代謝内科,2福岡大学医学部生理学教室,
3九州大学薬学研究院創薬科学部門薬効安全性学,
4京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻分子生物化学分野)

(18)
モルモット肺静脈の電気生理学的特性
行方衣由紀,恒岡弥生,杉本貴彦,竹田 潔,高原 章,田中 光
(東邦大学薬学部)

【参加者名】
鷹野 誠(自治医科大学 生理学講座・生物物理学部門),黒瀬 等,西田基宏(九州大学 大学院薬学研究院 薬効安全性学分野),松本明郎(大阪大学 微生物病研究所 疾患糖鎖学),渡邊泰秀(浜松医科大学 医学部看護学科健康科学 医療薬理学),村田光繁,相澤義泰,山川裕之(慶應義塾大学 医学部 再生医学講座),芦原貴司(滋賀医科大学 呼吸循環器内科・不整脈センター),亀山正樹,蓑部悦子,劉 彦(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 神経病学神経筋情報生理学分野),桑原宏一郎,木下秀之(京都大学 医学研究科 内分泌代謝内科 心臓研究室),安田賢二,金子智行,野村典正(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所),坂本多穂(福島県立医科大学 医学部 薬理学講座),大場貴喜,岡本洋介,尾野恭一(秋田大学 医学部 機能制御医学講座細胞制御学分野),古川哲史,黒川洵子(東京医科歯科大学 難治疾患研究所 生体情報薬理分野),村上慎吾(大阪大学大学院 医学系研究科 薬理学講座),田中 光,行方衣由紀,恒岡弥生(東邦大学 薬学部 薬物学教室),福原茂朋(国立循環器病センター研究所 循環器形態部),塩谷孝夫,市島久仁彦(佐賀大学 医学部 生体構造機能学講座 器官・細胞生理学分野),南沢 亨(早稲田大学先進理工学部 生命医科学科),横山詩子,赤池 徹,片山綾子(横浜市立大学 医学部 循環制御医学),岩本隆宏,喜多紗斗美(福岡大学 医学部 薬理学),赤羽悟美,伊藤雅方,坂倉智子,滕 金風(東邦大学 医学部医学科 薬理学講座),李 鍾國,高成広起(名古屋大学 環境医学研究所 心・血管分野),今泉祐治,大矢 進,山村寿男,大野晃稔,舩橋賢司,村田秀道,加藤大樹,谷口 賢,橋爪圭吾,藤高啓右,山本清司,鈴木良明,仲村恵梨奈,藤井将人,村松 真(名古屋市立大学 大学院薬学研究科 細胞分子薬効解析学分野),久保義弘,立山充博,伊藤政之,長友克広,松下真一,Batu KECELI,石井 裕(生理研神経機能素子)


【概要】
 平成20年度生理学研究所研究会「イオンチャネル・トランスポーターと心血管機能:学際的取り組みによる新戦略」を,11月19日-20日の両日64名の参加を得て開催した。学際的取り組みということで,特別講演としてナノスケールにおける心筋細胞ネットワークに関する発表を安田賢二先生(東京医科歯科大学),3次元コンピューターモデリングの発表を芦原貴司先生(滋賀医科大学)という工学的アプローチに取り組んでおられる2先生から発表をいただいた。心臓電気現象に関する多階層での工学的アプローチの知見を得ることができ,ウェット実験を主に行っている参加者との間で発展的な議論が交わされた。一般演題としては16題の発表があり,Ca2+チャネル・Na+-Ca2+交換輸送体・TRPCチャネルを中心としたCa2+動態に関する発表,血管新生・増殖・トーヌス・安定化や肺静脈の心筋スリーブの電気生理学的特性などの血管に関する発表,心臓線維化に関する発表などが主体であった。イオンチャネル・トランスポーター同士あるいは細胞内シグナル伝達分子との相互作用からなる“マクロ複合体による心臓電気現象の研究”へと新たな方向性が示された感があった。特筆すべきこととして,参加者間の共同研究による発表が4演題あり,この研究会が参加者間の実質的交流に大きく貢献していることを示しているものと考えられた。また,一般演題として本研究会に初めて参加・発表した横山詩子先生(横浜市立大学),松本明郎先生(大阪大学),福原茂朋先生(国立循環器病センター研究所)は,それぞれ心臓のcAMPシグナル研究,NOシグナル研究,血管アンジオポエチンのシグナル伝達という本研究会としては若干領域を異にした研究の発表を行い,特別講演の2先生ともども今後の新たな共同研究の発展や新たな学術領域の創生のきっかけとなることが期待され,極めて有意義な研究会であった。

 

(1) 血管平滑筋細胞で発生するCa2+スパークに関与する分子群のTIRF画像解析

山村寿男,大矢 進,今泉祐治
(名古屋市立大学 大学院薬学研究科 細胞分子薬効解析学分野)

 平滑筋の細胞膜直下で起こる局所Ca2+変動は,興奮収縮連関の引き金となることや生体の恒常性維持,病態時における帰還機構としても重要であると認識されている。平滑筋にCa2+過負荷が生じると,筋小胞体からの自発的Ca2+遊離が促進されて,Ca2+スパークが発生する。Ca2+スパークは,近傍に局在する大コンダクタンスCa2+活性化K+ (BK)チャネルの活性化を介してCa2+流入を制限した結果,筋緊張度を低下させる。本研究では,全反射蛍光(TIRF)顕微鏡下,血管平滑筋細胞で観察されたCa2+スパークの発生部位に局在する分子を可視化解析した。静止膜電位付近で観察されたCa2+スパークは,自発一過性外向き電流や過分極を誘発した。Ca2+スパーク発生部位は,リアノジン受容体の局在と良く一致した。BKチャネルの分布は,Ca2+スパーク発生部位とTIRF面において完全に一致はしなかったが,広がったCa2+スパークによって,BKチャネル活性が十分に惹起される位置に局在していた。また,細胞膜ラフト構造を形成するカベオリン分子はBKチャネルと良く共存し,Ca2+スパーク発生部位付近に局在していた。TIRF画像解析によって,Ca2+スパークが発生するようなCa2+マイクロドメインを構成すると考えられている分子集積を直接可視化したことは,平滑筋興奮収縮連関機構の解明に重要な知見を与えると考えられる。

 

(2) 細胞配列のパターン化による興奮伝播の制御
~骨格筋芽細胞・心筋細胞共培養系における催不整脈性の検討

高成広起1,李 鍾國1,三輪佳子1,井藤 彰3,中井淳一4,本多裕之2,児玉逸雄1
1名古屋大学環境医学研究所 心・血管分野,2名古屋大学大学院工学研究科,
3九州大学大学院工学研究科,4理化学研究所 脳科学総合研究センター)

【背景】重症心不全に対する骨格筋芽細胞移植法においては,致死的不整脈の発生が問題となっている。本研究においては,細胞配列のパターニングが,骨格筋芽細胞・心筋細胞共培養系における,興奮生成と伝播に対するおよぼす効果を調べた。

【方法】あらかじめ磁性ナノ粒子を取り込ませたヒト骨格筋芽細胞(SkMB)を,新生仔ラット由来培養心筋細胞 (CM)とともに多電極付培養皿上に共培養し,1)ランダムに播種した群(Random群),および2)培養皿底面下の一部に矩形磁石を静置し,SkMBをパターン化した群(Pattern群)に分類した。細胞外電位,細胞内Ca2+を測定し,自動能および興奮伝播パターンを観察した。

【結果】Random群では,伝導速度が著しく低下し,渦巻き型伝導や伝導途絶などの異常伝導を認めた。また,自発興奮の部位は培養系の各部位からランダムに発生する傾向が電位,細胞内Ca2+,いずれにおいても観察された。一方,Pattern群では,自発興奮の発生部位は一点に固定され,SkMB凝集部位で著しい電動遅延を生じたが,伝導方向はほぼ均一であった。

【結論】骨格筋芽細胞のランダム播種群に比べ,パターン化した群では,安定した興奮生成と伝播が観察された。異なる電気生理特性を有する細胞を用いた移植治療においては,パターン化して細胞を移植する方法が,催不整脈性を予防する上で,利点があると考えられた。

 

(3) ペースメーカーチャネルHCN4は,筋特異的転写因子
MEF2によって直接制御される

鷹野 誠1,村松慎一2,島崎久仁子3,魚崎英毅4,倉富 忍1,山下 潤4,桑原宏一郎5
1自治医大・生理学・生物物理学部門,2自治医大・神経内科,
3自治医大・生理学・脳神経生理学部門,
4京都大学・再生医学研究所,5京都大学・医学研究科・内分泌代謝内科)

 過分極誘発陽イオンチャネルHCN4は心臓ではペースメーカー細胞に特異的に発現しており,洞房結節の分子マーカーとして注目されている。その転写制御機構を解明するためVISTA GENOME BROWSERをもちいてhcn4遺伝子の周辺約100kbの非翻訳領域をスクリーニングし,種を超えて配列が保存されている領域(CNS1~CNS16)を同定した。これをhcn4最小プロモーターに連結したmini geneを作成し,ルシフェラーゼレポーターアッセイを実施した。その結果,MEF2結合領域とAP-1結合領域を有するCNS13は強いエンハンサー活性を持つことが判明した。次にゲルシフトアッセイならびにクロマチン免疫沈降法により,実際にCNS13にMEF2,AP-1が結合することを証明した。更にMEF2の優勢抑制性変異体を胎児心筋細胞に発現させるとHCN4の発現量は約1/5に低下した。これらの結果からhcn4は心臓においてMEF2によって直接転写が活性化されていると結論した。

 

(4) 拡張型心筋症における心室性不整脈のイオン機序:
変異トロポニンTノックインマウスモデルを用いた解析

塩谷孝夫,森本幸生,頴原嗣尚
(佐賀大学医学部 生体構造機能学講座 器官・細胞生理学分野,
九州大学大学院医学研究院 生体情報科学講座 臨床薬理学分野)

 心筋型トロポニンT遺伝子 (TNNT2) のΔK210変異に起因する家族性拡張型心筋症CMD1D (OMIM 601494)では心室性不整脈が多発することが知られている。そのイオン機序を,ΔK210変異型トロポニンT遺伝子を導入したノックイン(KI)マウスモデルを用いて検討した。実験には,ホモKIマウスおよび同腹仔の野性型マウスから単離した心室筋細胞を用いた。フィールド刺激により誘発した無負荷時収縮の振幅は,すべての刺激頻度 (1.6-10 Hz)でKIマウスが野性型より有意に小さく,KIマウスにおける変異トロポニンTの発現を支持した。生理的条件のホールセルクランプ下に誘発したKIマウスの活動電位には顕著なプラトー相(ピーク電位-19±4 mV)が認められ,野性型(52±2 ms)よりも有意に長い持続時間(APD 72±3 ms)を示した。さらに,KIマウスではイソプロテレノール(100 nM)投与で早期後脱分極をともなうAPD延長や異常自動能が誘発された。いっぽう,同一条件で記録したホールセル電流では,KIマウスは野性型に比べてItoおよびIK, slowの振幅に顕著な減少がみられ,また,Caトランジェントにともなう内向きNa/Ca交換電流のピーク振幅は有意に増大していた。これらの膜電流の変化はKIマウスに生じた活動電位波形の変化を支持し,CMD1Dの催不整脈性との関連が示唆された。

 

(5) サイクリックAMPエフェクター,Epacによる心臓線維化抑制作用

横山詩子1,石川義弘1,南沢 享2
1横浜市立大学大学院医学研究科循環制御医学,
2早稲田大学先進理工学部生命医科学科)

【背景】セカンドメッセンジャーであるサイクリックAMP(cAMP)が慢性心不全の病態でもある心臓線維化を抑制することが示唆された。そこでcAMPの新しい標的分子であるExchange Protein Activated bycyclic AMP (Epac)の心臓線維化に及ぼす作用を検討した。

【結果】線維化誘導物質であるTransforminggrowth factor beta1 (TGFb1) は,ラット心臓線維芽細胞でEpacの2つのアイソフォームのうちEpac1の発現を転写レベルで抑制した。TGFb1によるEpac1の発現低下は他の線維芽細胞(肺,皮膚,肝臓)でも認められた。さらにEpac1蛋白の発現はラット,マウスの心筋梗塞後の心臓線維芽細胞でも低下した。Epac1の過大発現はTGFb1による心臓線維芽細胞でのコラーゲン産生を抑制した。Epacは比較的低濃度のcAMPで活性化され,Rap1を介して線維芽細胞の遊走を促進したが。EpacはRap1非依存性にコラーゲンの産生を抑制した。

【結語】Epacは心臓線維芽細胞の創傷治癒の初期過程である遊走を亢進させるが,コラーゲンの産生は抑制した。またEpac1の低下は線維化に必要条件と考えられ,Epacの発現の制御は線維化の過程に重要な働きをすることが示唆された。

 

(6) S-nitrosylationを介したb受容体シグナル制御

松本明郎(大阪大学微生物病研究所疾患糖鎖学)

 「S-nitrosylationを介したb受容体シグナル制御」の演題にて以下の内容の発表を行なった。細胞内情報伝達系は,環境応答の惹起と,シグナルの適切な方向への伝達を行なうため,複数の制御系が関与する。なかでも,レドックス変化に基づく制御系はリン酸化に次ぐものとして重要である。一酸化窒素 (NO) によるシステインチオール基の特異的かつ可逆的な修飾反応であるS-nitrosylation(SNO化)はレドックス変化にともなうシグナル制御系のプロトタイプとして,タンパク質の活性・複合体形成・細胞内局在・転写因子・ユビキチン化の制御などに影響することが明らかにされてきた。さらに,近年,細胞膜受容体を介したシグナル伝達もSNO化により制御されていることが明らかにされた。bアドレナリン受容体に対する継続的な刺激入力は,その応答性を減弱させるが,その機構は不明であった。内在性NO合成酵素から産生されたNOは,受容体のリン酸化酵素であるGRK2のCys340をSNO化し,リン酸化能を抑制する。結果として膜上に存在する受容体数が維持され,脱感作を抑制し,刺激応答性を維持するのに寄与していることが明らかとなった。これらの結果は,SNO化によりGPCRシグナルが制御されていることを明らかにしたのみならず,リン酸化とSNO化とのクロストークが示されてきたことからも重要である。

 

(7) 心室細動誘発のトンネル伝播仮説:二相性ショックの優位性と関連して

芦原貴司(滋賀医科大学呼吸循環器内科・不整脈センター)

 電気的除細動が最初に報告されてから100年以上経つが,いまだそのメカニズムには不明な点が多い。電気ショックは心筋細胞を直接刺激するのではなく,細胞外液に電位勾配をかけることで間接的に刺激する。電気ショックではすべての心筋細胞が同時に脱分極すると考えられがちだが,実際には細胞内外の導電性の違いや,複雑な解剖学的構造のため,心筋各所で電流の収支にミスマッチが生じ,刺激電極から離れた領域でも仮想電極(VE)と呼ばれる脱分極や過分極が起こる。電気的除細動が成功するには,(1) VEが細動性興奮旋回のスパイラルリエントリー(SWR)を停止し,(2) VEから発生するショック後興奮(PA)が新たなSWRを誘発しないことが求められる。概して(2)に必要なエネルギーは(1)よりも高いため,除細動閾値(DFT)を下げるにはPA制御が近道である。PAには,ショックパルス開始とともに脱分極領域から広がるmake興奮と,ショックパルス終了直後に過分極領域が絡んで起こるbreak興奮がある。それらのPAが,電気ショック直後に存在する興奮可能領域のトンネルを抜け出し(トンネル伝播仮説),新たなSWRを誘発するとき除細動に失敗する。臨床では経験的に,単相性ショックよりも二相性ショックの方で除細動効率が良いと知られているが,我々の3次元ウサギ心室形状モデルを用いたin silico実験に基づけば,二相性ショックは(1) PA抑制と(2)トンネル伝播遮断の両効果により,優位性を示すと考えられた。

 

(8) 心筋細胞ネットワークによるオンチップ・リエントリー・モデルを用いた
期外収縮計測技術の開発

安田賢二,金子智行,野村典正(東京医科歯科大学・生体材料工学研究所)

 既存のhERG計測やQT延長計測によって,候補薬が期外収縮などの副作用を発生する危険を予測することには限界がある。そのため,hERG計測やQT延長計測に続く新しい心毒性計測技術の確立が期待されている。われわれは,心筋細胞をチップ上に1細胞単位で構成的に配置して環状ネットワークを形成することで,期外収縮の発生を観測できるリエントリー・モデルを構築することを試みている。実際に細胞集団を環状に配置すると,2次元シート状に配置した場合には観測されない期外収縮波形の発生が観測されることを確認できた。さらに心臓臓器機能についても,1細胞単位での細胞形状変化の光学計測,電位変化計測を組み合わせることによって,心拍出量,Na, K, Caなどのイオンチャンネルの状態を細胞ネットワークから計測することが可能であることも確認できた。本会では,上記,現在われわれが行っている研究のうち,心筋細胞集団の集団効果についてわかったこと,開発した心筋細胞ネットワークシステムの概要,このシステムの創薬,毒性検査への応用の可能性について報告を行った。

 

(9) Cav1.2 Ca2+チャネルのCaMによる調節機構

郭 鳳,蓑部悦子,矢沢和人,Hadhimulya Asmara,韓 冬雲,はお麗英,亀山正樹
(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 神経筋情報生理学,
中国医科大学 薬学院薬理学教室)

 心筋L型Ca2+チャネル(Cav1.2)のCa2+依存性促通 (CDF)と不活性化(CDI)にはカルモジュリン(CaM)が関与するが,その機構については不明な点が多い。我々は,Cav1.2チャネルにはCDF用とCDI用のCaM結合部位が別々に存在する(AおよびIサイト)というtwo-site modelを提唱しているが,これは広く受け入れられているone-CaM modelとは対立するものである。今回,two-site modelを検証する目的で,CaMのCa2+結合能を部分的になくした変異体(CaM12とCaM34)の心筋L型Ca2+チャネルに対する濃度依存的作用をinside-outパッチ法により検討した。ATP (3 mM) の存在下で,CaM12とCaM34 (0.7-10 mM)は,Cav1.2チャネルの開口確率を濃度依存的に増加させたが,より高濃度では抑制を示し,濃度-反応曲線は野生型CaMと同様にbell型となった。この曲線は,野生型CaMでは[Ca2+ ]iを増加させると低濃度側(左方)にシフトするが,両変異体では[Ca2+ ]iによる左方シフトは見られなかった。これらの結果は,A及びIの両サイトには共にCa2+-free CaM (apoCaM)とCa2+/CaMが結合しうるが,Ca2+による親和性増大にはCaMの4つ全てのCa2+結合部位が必要であることを示唆している。

 

(10) L型Ca2+チャネルを介した心筋Ca2+シグナル制御と破綻の分子機構

赤羽悟美,中瀬古寛子,伊藤雅方,水流弘通(東邦大学医学部薬理学)

 心筋L型Ca2+チャネルa1サブユニットとしてCaV1.2とCaV1.3が発現しており,心筋細胞の興奮性およびCa2+シグナルの制御においてそれぞれ異なる役割を担っている。慢性心房細動の発症メカニズムの一つとしてこれらの電位依存性L型Ca2+チャネルの活性低下が報告されている。

 そこで我々はL型Ca2+チャネルを取り巻くシグナル複合体(Ca2+シグナロソーム)の解明を目指してCaV1.2と相互作用する蛋白を探索し,PCTP-L (phosphatidylcholine transfer protein-like protein, StarD10) を同定し解析を行った。その結果,PCTP-LはCaV1.2との特異的な相互作用を介してその活性制御に関わることを見出した。心房肥大に伴いPCTP-Lの発現は減少し,また心房筋細胞のPCTP-Lをノックダウンすると活動電位プラトー相の減少と活動電位幅の短縮および心房細動様の頻脈が観察された。以上の結果から,心房筋細胞においてPCTP-LはL型Ca2+チャネルCaV1.2の活性制御に関わっており,その破綻は心房筋細胞の興奮性の異常を招くことが示唆された。

 

(11) 心筋細胞におけるカルシウムチャネル不活性化モデル

村上慎吾,河津俊宏,イアンフィンドレイ,鈴木慎悟,赤羽悟美,野村泰伸,倉智嘉久
(大阪大学医学部薬理学講座)

 心臓においてカルシウムは興奮,収縮に関与するイオンである。心筋細胞内でのカルシウム動態は心筋の機能に対して大きな影響を持つことが推測されているが,実験で定量的に計測することは難しい。そこで我々は不活性化に着目したL型カルシウムチャネルとカルシウム動態のモデルを開発した。L型カルシウムチャネルの不活性化過程には,電位依存性不活性化機構(VDI)とカルシウム依存性不活性化機構(CDI)がある。VDIは,b刺激条件下では弱まることが実験的に明らかになっている。この効果をモデルに取り込み,L型カルシウムチャネルのモデル化を行ったところ,コントロール,b刺激条件下でのシミュレーション結果は実験値とよく一致した。さらに我々は,現在開発しているモデル構築支援システムを用い,心筋細胞におけるカルシウムチャネルおよびチャネル直下の細胞内微細構造に関連するカルシウム動態のシミュレーションを行った。T管系,カルシウムチャネル,筋小胞体をモデル化し,より素過程に近いシミュレーションを行い,ダイアッド部における細胞膜内カルシウムイオンの時空間的動態を解析した。

 

(12) ヒト冠動脈平滑筋増殖におけるAmlodipineの作用と
Polycystic Kidney Disease (PKD1)の役割

大場貴喜,村上 学,渡邊博之,伊藤 宏,尾野恭一
(秋田大学医学部機能制御医学講座,細胞制御学分野,
内科学講座循環器内科学分野)

【背景】L型カルシウムチャネル阻害薬でもあるアムロジピンは血管平滑筋細胞の増殖を抑制することが知られているが,その機序は不明である。多発性嚢胞腎の原因遺伝子であるPKD1は細胞増殖の制御において重要な役割を持っていることが知られている。我々は冠動脈平滑筋細胞の増殖にアムロジピンの及ぼす影響と細胞内シグナルとしてPKD1関連経路の関与について検討した。

【方法と結果】ヒト冠動脈平滑筋細胞(hCASMCs)を対象とした。血清刺激によるhCASMCsの増殖はアムロジピン(10-9 to 10-6 M)により有意に抑制された。CDKインヒビターであるp21(Waf1/Cip1) の発現量はアムロジピン処置により増加した。このアムロジピンの効果はPKD1強制発現により再現され,さらにPKD1のdominant negative 変異体のR4227Xを強制発現させることにより打ち消された。イムノブロット解析およびルシフェラーセアッセイでは,アムロジピンとPKD1はJanus Kinase2 (JAK2)のリン酸化とSTAT1の転写活性を増加させた。

【結論】アムロジピンとそれに引き続くPKD1関連経路の活性化はhCASMC の細胞増殖を抑制しうる。それはJAK2/STAT1経路の活性化とp21(Waf1/Cip1) の発現量増加を伴う。

 

(13) a1受容体を介する血管トーヌス制御機構:TRPC3/NCX1共役系の役割

喜多紗斗美,伊豫田拓也,岩本隆宏(福岡大学医学部薬理学)

 a1受容体を介する血管トーヌス制御機構の機序については未だ十分に解明されていない。最近,私達はa1受容体刺激による血管収縮に1型Na+/Ca2+交換体 (NCX1)が関与することを示す実験的証拠を得た。具体的には,血管平滑筋特異的NCX1高発現マウスでは野生型マウスに比べてフェニレフリン刺激時の血管収縮(細胞内Ca2+シグナル)が有意に増大していることを見いだした。この機序を解析する目的で,血管平滑筋細胞を用いた免疫沈降実験,免疫染色実験およびショ糖密度勾配分離実験を行ったところ,NCX1はTRPC3と相互作用しカベオラ分画に共存していることが示唆された。そこで,血管平滑筋特異的TRPC3高発現マウスを作製したところ,フェニレフリン刺激時の血管収縮(細胞内Ca2+シグナル)が顕著に増大することを観察した。一方,NCX1へテロ欠損マウスおよび抑制型TRPC3高発現マウスでは,同刺激の細胞内Ca2+シグナルが有意に減弱していた。また,NCX1およびTRPC3の高発現マウスに高濃度のノルエピネフリンを静脈内投与すると,共に冠スパスムに起因する心電図ST上昇が誘発された。この冠スパスムはNCX阻害薬処置および抑制型TRPC3遺伝子導入により抑制された。これらの結果は,TRPC3/NCX1共役系がa1受容体を介する血管トーヌス制御に重要な役割を果すことを示唆している。

 

(14) アンジオポエチン-1/Tie2受容体シグナルによる
血管安定化・血管新生制御機構

福原茂朋,望月直樹(国立循環器病センター研究所・循環器形態部門)

 アンジオポエチン-1 (Ang-1) は血管内皮細胞に発現する受容体型チロシンキナーゼTie2を介して血管構造安定化と血管新生の両方の機能を制御している。しかし,これら二つの現象は細胞生物学的に異なった反応によって制御されており,Ang1/Tie2シグナルがどのような機構でこれら相反する機能を制御しているのか不明であった。今回我々はこの疑問を解明するため,Ang1刺激によるTie2の局在変化と,それに伴って活性化されるシグナル伝達系を解析した。その結果,成熟した血管で見られるような細胞間接着を有する内皮細胞をAng1で刺激すると,Tie2はAng1を介して細胞間接着部位でトランス結合を形成し,Aktなど血管安定化シグナルを活性化することを発見した。一方,血管新生過程のように細胞間接着を持たない内皮細胞では,Tie2は細胞-基質接着面でAng1及び細胞外マトリックスと複合体を形成し,MAKキナーゼなどの血管新生シグナルを活性化することを明らかにした。以上の結果から細胞間接着によってAng1/Tie2シグナルは空間的・機能的に制御されており,それにより“血管安定化”と“血管新生”という異なる機能を調節していることが明らかになった。

 

(15) 圧負荷による心臓の線維化におけるG12/13 蛋白質の役割

西田基宏,上村 綾,仲矢道雄,黒瀬 等(九州大・薬・薬効安全性)

 慢性的な高血圧により誘発される心臓の形態変化(リモデリング)は,心不全を引き起こす要因の1つとして考えられている。アンジオテンシン(Ang)やエンドセリン(ET),ノルアドレナリンなどで誘発される心肥大は,主にGq蛋白質を介して起こると考えられている。我々はこれまでに,ラット初代培養心筋細胞に発現するAT1受容体,ETA受容体,a1アドレナリン受容体がG12ファミリー蛋白質(G12/G13)とも共役しうることを報告してきた。しかし,心臓におけるG12/G13の役割については未だ明らかでない。そこで,G12/G13aサブユニット(Ga12/Ga13)の機能を阻害するポリペプチド(p115-RGS)を心筋特異的に発現させたトランスジェニック(TG)マウスを作成した。マウスの横行大動脈を狭窄し,6週間の圧負荷を行った結果,TGマウスでは野生型マウスと同程度の心肥大が引き起こされたものの,間質のコラーゲンの蓄積(線維化)が有意に軽減されていた。さらに,圧負荷によるGa12/Ga13活性化のメカニズムを調べたところ,P2Y受容体の関与が示された。阻害剤を使ったin vivoの結果や新生仔心室筋細胞を使ったin vitroの結果と合わせ,機械的伸展負荷により心筋細胞から放出されたヌクレオチドが心筋細胞のP2Y受容体を介してGa12/Ga13シグナリングを活性化し,線維化を誘導する可能性が示された。

 

(16) ラット腱細胞でのNa+ -Ca2+ 交換輸送体の発現と機能

坂本多穂1,色摩弥生1,大和田有紀1,岩本隆宏2,和栗 聡3,和田郁夫4,木村純子1
(福島医大・医・1薬理,3解剖組織,4細胞科学・2福岡大学・医・薬理)

【目的】腱細胞は,腱の損傷・炎症時に活性化し,遊走・増殖・収縮をおこす。これら生理応答にはCa2+シグナルが関与する。本研究では,Na+-Ca2+交換輸送体(NCX)の,腱細胞での発現・機能を検討した。

【方法】ラットアキレス腱から,酵素処理で腱細胞を単離し,継代培養した。NCXのmRNAと蛋白質の発現解析はreal-time RT-PCR法とWestern Blot法で行った。細胞内Ca2+濃度([Ca2+ ]i)は,Fura-2AMを負荷し,測定した。腱細胞の収縮は,コラーゲンゲル中で培養し,その収縮を指標とした。

【結果】腱細胞では,NCX1のmRNAと蛋白質の発現が認められた。抗体染色すると,NCX1は腱細胞の細胞膜,特に突起部に局在していた。細胞外Na+低下により[Ca2+ ]iは上昇し,NCX阻害薬KB-R7943は,これを抑制した。またKB-R7943は定常[Ca2+ ]iも低下させた。NCXを介したCa2+流入を示唆する。腱細胞を密に培養し,チップで傷つけると,腱細胞の遊走が観察できる。KB-R7943存在下では,遊走速度は低下した。KB-R7943は腱細胞のゲルの収縮も抑制した。

【考察】ラット腱細胞にはNCX1が発現しており,Ca2+流入経路として機能する。腱細胞の遊走および収縮がNCX阻害薬により抑制されることから,NCXは腱の損傷治癒過程に関与する可能性がある。

 

(17) ナトリウム利尿ペプチドの心保護作用におけるTRPC6の役割

木下秀之1,桑原宏一郎1,井上隆司2,西田基宏3
黒瀬 等3,清中茂樹4,森 泰生4,中尾一和1
1京都大学大学院医学研究科内分泌代謝内科,2福岡大学医学部生理学教室,
3九州大学薬学研究院創薬科学部門薬効安全性学,
4京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻分子生物化学分野)

【背景・目的】心肥大刺激に対するナトリウム利尿ペプチドの心保護作用の詳細な分子機序はまだ不明な点が多い。今回我々は病的心筋リモデリングへの関与が最近示されているTRPC6のナトリウム利尿ペプチドの心保護作用における標的分子としての可能性を検討した。

【結果】ラット新生仔心室筋細胞において,TRPC6過剰発現やET-1刺激によるMCIP1 (RCAN1)プロモーター活性化をANPおよび8Br-cGMPは抑制したが,PKGリン酸化部位を変異させたmutant TRPC6 (TRPC6T69A)過剰発現によるMCIP1(RCAN1)プロモーター活性亢進は抑制しなかった。

TRPC6発現HEK293細胞においてOAG刺激によるCa流入をANPは強力に抑制したが,TRPC6T69AによるCa流入は抑制しなかった。またTRPC6発現HEK293細胞におけるTRPC6電流を,ANPは同様に抑制した。さらにラット新生仔心室筋細胞においてもAng IIやET-1刺激によるCa流入増加をANPはnitrendipine非依存性,BTP-2依存性に抑制した。

ANP・BNP受容体GC-A(NPR1)を欠失し高血圧と心肥大を呈するマウス(GCA-KO)において心室でのTRPC6発現が亢進しており,BTP2投与はGCA-KOの心肥大を血圧非依存性に有意に軽減した。

【結論】ナトリウム利尿ペプチドによる心保護作用機序に,TRPC6を介する心肥大シグナルに対する抑制効果が関与していることが考えられた。

 

(18) モルモット肺静脈の電気生理学的特性

行方衣由紀,恒岡弥生,杉本貴彦,竹田 潔,高原 章,田中 光(東邦大学薬学部)

 心筋細胞層を有する肺静脈が心房細動の発生に関与していると報告されたこともあり,肺静脈心筋がいかなる性質を有するのか注目されている。そこで本研究では,モルモット摘出肺静脈組織標本に微小電極法を適用し,肺静脈心筋の電気生理学的特性を薬理学的に検討した。定頻度刺激(1Hz)下での肺静脈心筋の活動電位は左心房筋標本に比べ,静止膜電位が浅く,amplitudeが小さいものであった。ほぼすべての標本で第4相で緩徐な脱分極が観測され,その傾きはNa+/Ca2+交換機構(NCX)の選択的阻害薬SEA0400により抑制された。自発活動を有する肺静脈にSEA0400およびryanodineを処置すると,自発活動の頻度の減少と停止が見られた。自発活動を示さない肺静脈標本にouabainを処置すると自発活動の出現が認められ,これらはSEA0400およびryanodineによって抑制された。以上の結果からモルモット肺静脈心筋は心房筋とは異なる活動電位波形を有し,自発活動を発生しやすい傾向があることが判明した。また,筋小胞体から放出されたCa2+がNCXのforward modeを活性化して緩徐な脱分極に寄与していること,筋小胞体のCa2+負荷量の増加によりこの機序が顕在化し,自発活動につながることが示唆された。

 



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