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12. | サッケード抑制にかかわる神経経路の同定 |
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Lee PH*, Sooksawate T*, Yanagawa
Y, Isa K, Isa T**, Hall W** Identity of s pathway for saccadic suppression. Proceedings of National Academy of Sciences USA, 104: 6824-6827 (2007) (online free access) * = equal contribution, **=co-corresponding authors 我々は日常、急速性眼球運動(サッケード)という速い眼球運動によって目を動かしているが、サッケードの最中は視覚信号処理が中断されているため、我々の視覚イメージは眼が動いてもぶれることは無く安定している。また、サッケード遂行中に網膜上に生じる物体の動きの視覚刺激がさらにサッケードを誘発することはない。このようなサッケード遂行中の視覚情報の遮断は「サッケード抑制」と呼ばれている。このようなサッケード抑制のメカニズムについては、当初、網膜の活動の変化や外眼筋の伸張受容器からのフィードバック入力などが作用している可能性が検討されたが、いずれも実験的に否定された。その結果、中枢神経系におけるサッケード制御の運動指令が内部フィードバック(随伴発射=corollary
discharge)によって視覚入力を抑制しているのではないか、と考えられているがどのような抑制経路が存在するのかは明確でなかった。この問題に関連して、GoldbergとWurtz
(1972)はサルのサッケードの制御中枢である中脳上丘の視覚入力層である浅層において、サッケード遂行中の神経活動を記録・解析した。すると浅層のニューロンはサッケードと同じ速さで動く視覚刺激に応答することはできるが、サッケード遂行中にその視覚応答は抑制されていることが明らかにした。上丘浅層のニューロンは視覚系視床を経て大脳皮質視覚関連領域に投射することから、このような抑制はサッケード中の動く視覚刺激によって新たなサッケードが起きないようにするとともにサッケード遂行中の視覚認知の抑制に関わっていると考えられた。しかし、この上丘浅層の視覚応答の抑制がどのようなメカニズムによるのかは長年明らかでなかった。 |
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